離婚調停の流れとは? 調停の概要や進め方など離婚調停の基礎知識

2021年11月01日
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離婚調停の流れとは? 調停の概要や進め方など離婚調停の基礎知識

長崎県が公表している『第67版(令和2年)長崎統計年鑑』によると、令和元年中に長崎県内における離婚件数は、2126件でした。

離婚に向けた話し合いが思うように進まないと、裁判による解決を検討することになります。しかし離婚裁判を起こすためには、その前に「離婚調停」を申し立てる必要があります。離婚調停とはどのような手続きであり、裁判とはどのような違いがあるのでしょうか。

本コラムでは、離婚調停の概要と申し立て方法、調停の流れについて、ベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士が解説します。

1、すぐに裁判はできない? 調停前置主義とは

夫婦が離婚する際、話し合いをしても合意ができなければ、裁判しかないと考えるかもしれません。しかし日本では、家庭裁判所において調停を行うことができる事件については「調停前置主義」が採用されているため、裁判を提起する前に「調停」を申し立てる必要があります。

  1. (1)調停前置主義の概要

    調停前置主義とは、訴訟の前に家事調停を申し立てなければならないとする制度です。相手が明確に離婚を拒絶していたり、親権や財産分与、慰謝料で真っ向から対立して合意の見込みがなかったりする場合でも、いったんは調停による話し合いを行わなければなりません。

    調停でも話し合いがまとまらず「不成立」となったときにはじめて、離婚訴訟を提起することができます。そのため、話し合い(協議)がまとまらなければ、まずは家庭裁判所で「離婚調停」を申し立てましょう

    なお長期にわたって相手が所在不明などで、調停を行っても明らかに無意味なケースでは、調停前置主義の例外が認められており、すぐに離婚訴訟ができる可能性もあります。ただし、極めてレアなケースであると言えるでしょう。

  2. (2)離婚に至るまでの一般的な流れ

    まず、離婚が成立するまでの、一般的な流れを確認しておきましょう。

    ●話し合う(協議)
    まずは相手と離婚について話し合います。離婚することに加え、財産分与、養育費などの離婚条件について合意ができれば、役所へ離婚届を提出することで離婚が成立します。
    なお、協議離婚が成立した場合は、取り決めをまとめた「離婚協議書」を、強制執行認諾文言つきの公正証書で作成しておくことが望ましいでしょう。

    ●離婚調停を申し立てる
    話し合いで離婚が成立しない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
    調停は裁判所で行われますが、あくまでも話し合いにより解決を目指す手続きのため、双方が納得できなければ調停は成立しません。

    ●離婚訴訟を申し立てる
    調停でも合意ができない場合、家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。
    裁判所が離婚原因の有無を確認した上で、離婚の可否、財産分与や親権、慰謝料などの離婚条件について決定します。判決で離婚が認められた場合は離婚が成立しますが、離婚自体が認められない可能性もあります。

2、離婚調停は何をする? 何が決まる?

では、離婚調停がどのように進むのか、具体的にみてきましょう。

  1. (1)離婚調停は話し合い

    前述したように、離婚調停は話し合いによって解決を図るための手続きです。調停委員が間に入りますが、結論を強制されることはありません。合意ができなければ「不成立」となります。

  2. (2)調停のメリット

    離婚調停は、調停委員が間に入り話し合いを進めてくれるため、感情的になりにくく、問題点をひもときながら話を誘導してくれるので前向きに対応がしやすくなります。当事者では打開策を見いだせないような場合は、調停委員が解決案を提示してくれるケースもあるでしょう。
    離婚調停で話し合いがまとまり離婚が成立することも多いので、離婚調停を申し立てる意味は十分にあると言えます。

  3. (3)原則として相手と顔を合わせる必要はない

    離婚調停は当事者同士の話し合いであると聞くと、「相手と顔を合わせる必要があるのだろうか?」と心配になるかもしれません。

    離婚調停では、当事者同士が別々の待合室で待機しており、別々に呼び出されて調停委員とだけ話をします。そのため、原則として相手と直接顔を合わせて話をすることはありません。
    ただし、調停が成立したときは、相手と同室で裁判官から調停条項の確認が行われるので、顔を合わせることになります。しかし、すでに話し合いは決着しているため、顔を合わせても、相手と話をする必要はないでしょう。

  4. (4)調停にかかるおおよその期間

    離婚調停で、申し立てから成立あるいは不成立までにかかる期間は、おおよそ半年程度でしょう。しかし、ケース・バイ・ケースではあるため、早ければ3か月程度で、長ければ1年ちかくかかることもあります。

  5. (5)調停が成立した後の対応

    調停が成立すると、裁判所で「調停調書」が作成されます。調停調書は調停が成立した日から2、3日で当事者へ送付されます。
    ご自身か相手のどちらかが、調停調書を役所に持参し離婚届を提出すれば、離婚は成立します。どちらが離婚届を提出するかは、調停成立時に決めることが多いでしょう。

3、離婚調停の流れと注意点

では、離婚調停の申し立てから当日までの流れと、注意点について確認していきます。

  1. (1)申し立てに必要な手続き

    離婚調停を申し立てる裁判所は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。裁判所のホームページに全国の家庭裁判所が掲載されているので、まずは管轄を調べましょう。

    申し立てに際しては、次のような書類と費用を準備する必要がありますが、家庭裁判所によって必要書類等が異なるケースもあります。家庭裁判所の受付などで、必要書類や書き方などについて教えてもらうことができるほか、裁判所のホームページ上にも書類の記載方法について掲載されているので、参考になるでしょう。

    ●必要書類

    • 調停申立書
    • 事情説明書
    • 子どもについての事情説明書(未成年の子どもがいる場合)
    • 連絡先等の届出書
    • 非開示の希望に関する申出書(相手に住所を知らせたくない場合)
    • 進行に関する照会回答書
    • 夫婦の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)(3か月以内に発行されたもの)
    • 「年金分割のための情報通知書」(発行から1年以内のもの)
    ※年金分割についての申し立てが含まれている場合のみ必要です。


    ●費用

    • 収入印紙1200円
    • 連絡用の郵便切手(金額は裁判所によって異なります)
  2. (2)申し立てが受理された後の流れ

    ●期日通知状が届く
    申し立て後1~3週間で当事者双方へ期日通知状が届きます。期日には、家庭裁判所へ出向く必要があるので、予定を空けておきましょう。

    ●第1回期日
    家庭裁判所では、当事者は別々の待合室で待機し、交互に呼び出されて調停委員と話をします。先に申立人が呼び出されて調停委員と話をし、その後入れ替わって相手方から聞き取りが行われるという流れが一般的です。
    初回で合意ができなければ、次の期日が設定されます。

    ●第2回以降の期日
    2回目以降の期日は、1か月~1か月半程度のペースで開かれ、調停が成立するか不成立が確定するまで、続きます。

  3. (3)調停期日までに準備しておくことと注意点

    ●資料を用意する
    財産分与や子どもの監護状況を示す資料、相手の不貞行為(不倫)などがあった場合はそれらを示す証拠を可能な限り集めておくようにしましょう。資料を元に説明することで、調停委員に事情を的確に伝えることができます。

    ●主張を整理しメモしておく
    調停で伝えたいことは、事前に整理してまとめておくと良いでしょう。また、当日はノートと筆記用具を持参しておくと、話し合いの経過や次回の予定を書き取れるので便利です。

    ●マナーを守る
    調停委員に与える印象も大切です。しっかりと身なりを整えてマナーを守るように心がけましょう。

    ●わかりやすく話をする
    調停委員から聞かされる相手の言い分には、納得できない事柄があるかもしれません。しかし、感情的になって怒鳴る、一方的に文句を言うなどの行為は、良い結果にはつながりません。自分の主張を受け入れてもらうためは、わかりやすく論理的に話をしましょう

4、離婚問題は弁護士に相談したほうが良い?

弁護士へ依頼するタイミングについて、悩まれる方は少なくありません。では、離婚の問題を抱えている場合、どのようなタイミングで依頼するのが良いのでしょうか。

●協議離婚の段階
多く方は、話し合いの時点では弁護士に依頼する必要はないと考えるようです。しかし、実際には話し合いの段階から弁護士が介入したほうが、スムーズに離婚が成立することが少なくありません。
話し合いでは妥協点が見いだせず、調停を申し立てるべきか悩まれている場合は、一度弁護士に相談してみることをおすすめします

●調停の申し立て/調停の途中
調停は、話し合いによって解決を図る手続きです。そのため、ご自身の主張をうまく伝えることができなければ、望まない結果になってしまうおそれもあります。

その点、弁護士が調停に同席していれば、的確な主張を行うことができます。
また、調停で申し入れされた条件について、受け入れて不利になることはないのか、他の妥協点はないのかなどのアドバイスができる他、調停委員を説得しやすい証拠や資料についても熟知しているので、万全の体制で調停に臨むことができるでしょう。

また、弁護士は調停に同席するだけではなく、調停の申し立てに必要な書類等の作成、裁判所とのやり取りなどの一切を依頼できるという点も大きなメリットと言えます。

なお、ご自身で進めてみたものの対応に苦慮している場合などは、途中からでも依頼は可能です。

●訴訟を提起するとき
調停が不成立になった場合は、離婚訴訟で離婚成立を目指すことになります。訴訟を提起する場合は、弁護士のサポートは必須です。なお、協議や調停の段階で弁護士へ相談していれば、引き続きサポートを得ることができるので心強いでしょう。

5、まとめ

離婚調停は、話し合いによって解決を図る手段のため、ご自身の主張を的確に伝える必要があります。個人で申し立てることもできますが、弁護士のサポートがあれば、有利に進められる可能性が高くなり、後悔しない離婚を実現しやすくなるでしょう。

1日でも早く新しい生活をスタートさせるためにも、離婚協議がまとまらずに困っている方、離婚調停を進めようか迷っている方は、ぜひ一度、ベリーベスト法律事務所 長崎オフィスまでご相談ください。
しっかりとお話を伺った上で、離婚成立に向けて全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています