金銭感覚の不一致が原因で離婚したい場合の、離婚の進め方と注意点

2022年05月02日
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金銭感覚の不一致が原因で離婚したい場合の、離婚の進め方と注意点

配偶者と金銭感覚が一致していない場合、結婚生活を送る中で支障が生じる可能性が高いです。

もし配偶者との金銭感覚の不一致が著しい場合には、弁護士にご相談のうえで、離婚という選択肢についても検討してみましょう。

本コラムでは、金銭感覚の不一致を理由に離婚できる場合の例や、離婚成立に向けて必要となる手続きなどについて、ベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士が解説します。

1、金銭感覚の違いは離婚理由として認められる?

金銭感覚の違いを理由とした離婚が認められるかどうかは、離婚のために用いる手続きによって結論が異なります。

  1. (1)協議離婚・調停離婚であれば、離婚理由は問わない

    夫婦が話し合った結果として成立する離婚を「協議離婚」、裁判所の離婚調停を通じて成立する離婚を「調停離婚」と言います。

    協議離婚や調停離婚の場合、夫婦双方が合意さえすれば、離婚を成立させることができます。
    その際、離婚理由が何であるかは一切問われません。

    したがって、協議離婚および調停離婚については、金銭感覚の不一致を理由とする離婚も認められます。

  2. (2)裁判離婚の場合、「法定離婚事由」に当たるかどうかがポイント

    裁判所の離婚訴訟における判決によって成立する離婚を「裁判離婚」と言います。

    裁判離婚は、夫婦の一方が離婚に反対していても、裁判所の判断によって強制的に成立することが特徴となります。
    ただし、裁判離婚が認められるためには、民法第770条第1項各号に定められる「法定離婚事由」のいずれかが存在することが必要とされています。

    <法定離婚事由>
    • ① 不貞行為
    • ② 悪意の遺棄
    • ③ 3年以上の生死不明
    • ④ 強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと
    • ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由


    金銭感覚の違いを理由とした裁判離婚が認められるかどうかについては、上記の法定離婚事由のいずれかに該当するような行為や状態が存在するかどうかが、重要な判断ポイントになります。
    具体的には、「②悪意の遺棄」か「⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由」のどちらかに該当するか否かが問題となってくるのです

2、金銭感覚の不一致が法定離婚事由に当たり得るケース

金銭感覚の不一致は、互いに違う人間である以上、どの夫婦にも多少なりとも存在するものです。
したがって、少々金銭感覚がずれている程度では、法定離婚事由として認められません

しかし、金銭感覚の不一致に起因して夫婦生活に重大な支障を生じさせる事情が発生している場合などには、法定離婚事由が認められることもあり得るのです。

  1. (1)相手が生活費をほとんど支払わない場合

    夫婦は互いに、婚姻費用の分担義務を負っています(民法第760条)。
    したがって、夫婦生活を送っていくうえでは、資力に応じた金銭的な負担を相互に行うことが当然の前提です。

    しかし、夫婦のなかには、金銭感覚の違いがエスカレートして以下のような事態を引き起こし、生活費の負担に大きな不公平が発生してしまうケースもあります。

    • 過度な倹約を目指すあまり、生活費をほとんど渡さない
    • 自分の趣味のために収入の大半を浪費してしまい、生活費を支払えない


    このようなケースでは、法定離婚事由である「悪意の遺棄」または「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が認められる可能性があるのです。

  2. (2)相手があまりにも多額の借金をしている場合

    非常に大きな金額の借金をしている場合、元本や金利の支払いが生活を大きく圧迫する事態になりかねません。
    夫婦が合意のうえで、生活に必要なお金として借り入れているのであればともかく、夫婦の片方が自分の趣味などのために配偶者に無断で多額の借金をしている場合には、大きな問題となるでしょう。

    例えば、競馬やパチンコなどのギャンブル依存、さらに悪質なケースでは違法薬物への依存などを理由に配偶者に黙って借金をするのがその典型例です。
    このような理由で、配偶者に無断で多額の借金をしている場合には、法定離婚事由である「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が認められる可能性があります。

3、金銭感覚の不一致を理由に離婚したい場合の対処法

金銭感覚の不一致を理由に離婚を目指す場合、基本的には、「協議離婚→調停離婚→裁判離婚」という順番で手続きを行うことになります。

  1. (1)協議離婚を試みる|離婚条件の話し合いが必要

    夫婦間の話し合いによる「協議離婚」は、もっとも短期間かつコストをかけずに離婚を成立させることができる方法です。
    そのため、まずは配偶者に相談して、協議離婚を試みるのがよいでしょう。

    協議離婚にあたっては、まず配偶者が離婚自体に同意するかどうかが問題となります。
    もし配偶者が離婚に反対している場合には、「金銭感覚の著しい乖離(かいり)によって、これ以上夫婦生活を続けていくことは難しい」ということを伝えて説得しましょう。

    また、協議離婚をする際には、以下の離婚条件を取り決めておくことも大切です。

    • 財産分与
    • 慰謝料
    • 年金分割

    離婚前に別居する場合
    • 婚姻費用

    子どもがいる場合
    • 親権
    • 養育費
    • 面会交流


    離婚後のトラブルを避けるためには、弁護士のサポートを受けながら、上記の離婚条件についてももれなく合意しておくことが大切です。

  2. (2)拒否された場合は離婚調停を申し立てる

    配偶者が離婚そのものに反対していたり、離婚条件について折り合いがつかなかったりした場合には、「調停離婚」を行うことになります。

    離婚調停では、客観的な立場にある調停委員が、夫婦双方の主張を公平に聞き取り、もめているポイントとそうでないポイントを整理します。
    そのうえで、もめているポイントについては、夫婦双方に譲歩を促し、離婚条件をすり合わせていくことになるのです。

    もし配偶者が離婚を拒否している場合でも、金銭感覚の不一致が著しいことを調停委員に伝えれば、離婚に同意するよう、調停委員が配偶者を説得してくれる場合もあります。
    提示された調停案に夫婦双方が合意した場合には、調停離婚が成立します。

  3. (3)調停不成立になったら裁判離婚を検討する

    離婚調停をすすめても調停案への合意が得られなかった場合には、「裁判離婚」を目指すことになるでしょう。

    前述のとおり、裁判離婚を認める判決を得るためには、なんらかの法定離婚事由が存在することが必要となります。
    したがって、離婚訴訟を提起するに当たっては、どのような構成によって法定離婚事由の存在を主張するのか、事前に綿密な検討を行うことが重要です

    離婚訴訟では、法定離婚事由の存在を、証拠によって立証する必要があります。
    したがって、協議離婚や調停離婚の場合以上に、きちんとした資料や根拠を準備することが大切になるのです。

    離婚訴訟で有利な条件による離婚を認めてもらうためには、準備や対応を弁護士に依頼することをおすすめします。

4、金銭感覚の違いで離婚したい場合は弁護士に相談を

夫婦間の金銭感覚の不一致は、不一致の程度や配偶者の行動の具体的な内容などによって、法定離婚事由として認められるかどうかの判断が分かれます。

法定離婚事由として認められる公算が高いのか、そうでないのかによって、離婚を目指す際の方針も変わってきます。
したがって、金銭感覚の不一致を理由として離婚を目指す場合には、事前に弁護士にご相談いただくことをおすすめします

弁護士は、協議離婚・調停離婚・裁判離婚のそれぞれの手続きにおいて、依頼者が望む形での離婚を実現できるように尽力いたします。
配偶者との協議や、調停・訴訟の手続きも弁護士が代行することができますので、離婚に関して当事者が抱く時間的・精神的な負担を軽減させることができるのです。

5、まとめ

金銭感覚の不一致を理由に配偶者と離婚したい場合には、まずは協議離婚や調停離婚を目指すことになります。
協議離婚・調停離婚であれば、離婚理由が何であるかにかかわらず、成立させることができます。

一方で、裁判離婚については、金銭感覚の不一致が「法定離婚事由」に当たると裁判所に認められる必要があります。
配偶者の具体的な行動などから、金銭感覚の不一致が致命的なレベルであることを証拠によって示すことが必要となるため、事前に十分な準備を整えなければいけません

ベリーベスト法律事務所では、配偶者との離婚を希望する方からのご相談を、随時受け付けております。
長崎県にお住まいで、配偶者との金銭感覚の違いにお悩みの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 長崎オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています