突然、離婚を求められた|離婚に応じる条件を相手に提示しても良い?

2022年10月25日
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突然、離婚を求められた|離婚に応じる条件を相手に提示しても良い?

長崎市が公表している統計資料によると、令和2年に長崎家庭裁判所(本庁)に申し立てられた家事調停事件の件数は480件でした。そのうち、「婚姻中の夫婦間の事件」については、139件です。

突然、配偶者から「離婚をしたい」という申し出を受けたら、どのように対応すればよいかわからず困惑してしまう方も多いでしょう。自分は離婚をしたくないという場合には、明確な離婚原因がないのであれば、離婚を拒絶することもできます。

しかし、もし自分も離婚をしてもよいという場合には、離婚に応じることを交渉の材料として、有利な離婚条件を引き出すことができる場合があります。本コラムでは、配偶者から離婚を切り出された場合の対応について、ベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士が解説します。

1、まずは知っておきたい、法的に離婚可能な5つの事由

まず、離婚を考えるにあたって重要になる、「法定離婚事由」について解説します。

  1. (1)法定離婚事由とは

    法定離婚事由とは、裁判で離婚をする際に必要となる離婚原因のことをいいます。

    お互いに離婚に同意をしている場合には、協議によって離婚をすることができますが、夫婦のどちらか一方が離婚を拒絶している場合には、最終的に離婚裁判を起こすことになります。
    裁判になった場合には、原則として、民法が定める法定離婚事由がなければ離婚をすることができません。
    そのため、法定離婚事由に該当する事情があるかどうかは、離婚に向けた方針を考えるにあたってとても重要になるのです

  2. (2)民法が定める5つの離婚事由

    民法770条では、以下の事由が法定離婚事由と定められています。

    ① 不貞行為
    不貞行為とは、配偶者以外の異性との間で、肉体関係を持つことをいいます。
    一般的に「不倫」という言葉からイメージされるものの多くは不貞行為に該当しますが、肉体関係(セックス)を伴わない浮気や不倫は不貞行為に該当しない点に注意してください。

    ② 悪意の遺棄
    悪意の遺棄とは、民法752条で定められている夫婦の基本的な義務を放棄することをいいます。
    具体的には、配偶者に生活費を渡さない・正当な理由もなく同居を拒否する・健康であるにもかかわらず働かない・配偶者を虐待して追い出す、などのケースが悪意の遺棄に該当します。

    ③ 配偶者の生死が3年以上不明
    配偶者から最後の消息があったときから3年以上生死が不明な状態が続いている場合も法定離婚事由となります。
    生死不明であることが要件となりますので、所在不明であるものの生きていることが明らかである場合には、法定離婚事由にはあたりません。

    ④ 配偶者が強度の精神病になり回復見込みがない
    配偶者が強度の精神病になり、回復の見込みがないという場合には、夫婦の基本的な義務を果たすことができませんので、法定離婚事由となります。

    ただし、精神病を理由として離婚をする際には、精神病になった配偶者の生活が著しく悪化するおそれがありますので、離婚の可否については慎重に判断されることになります。

    ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由
    上記の①から④までに該当する事情がなかったとしても、夫婦生活を続けることが困難といえる事情がある場合には、法定離婚事由に該当する場合があります。
    「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として認められる可能性のある事情としては、以下のものが挙げられます。
    • 長期間の別居
    • DV、モラハラ
    • ギャンブルによる浪費
    • セックスレス、性的異常
    • 犯罪による服役

2、相手から離婚を切り出された場合の対応について

以下では、相手から離婚を切り出された場合にとれる対応について解説します。

  1. (1)離婚をしたくない場合の対応

    自分は離婚をしたくないのに相手から離婚を切り出された場合には、まずは、相手がどのような理由で離婚を求めているのかを確認してください
    そのうえで、相手の主張する理由に納得がいかない場合には、離婚を拒否するという対応でよいでしょう。

    相手との復縁を目指すのであれば、しばらくの間別居をしてお互いに冷静になった後に話し合いをするというのも有効な手段となります。
    また、お互いに話し合いが難しい状況であれば、家庭裁判所の円満調停を利用してみましょう。
    ただし、別居期間が長期に及んでしまうと、法定離婚事由に該当してしまうおそれがありますの。
    離婚をしたくない場合には、別居中も何かしらの交流をもっておくことが大切です。

  2. (2)離婚に応じてもよい場合の対応

    自分も離婚に応じてもよいという場合には、離婚条件にどれだけこだわるかによって、とるべき対応が異なります。

    ① 離婚の条件にこだわりがない場合
    離婚の条件にこだわりがないという場合には、離婚届に記入をしてすぐに離婚をすることもできます。

    ただし、法定離婚事由に該当する事情がない場合には、離婚をするかどうかの主導権は、離婚を求められた側にあります。
    離婚に応じることを交渉の材料として、親権、養育費、慰謝料、財産分与などの離婚条件について、有利な条件を引き出すことができる可能性がありますので、安易に離婚に応じてしまうのはおすすめできません。
    離婚の条件にこだわりがないという場合でも、以下のように、条件付きでの離婚を提案してみるとよいでしょう

    ② 条件付き・条件次第で離婚に応じたい場合
    離婚をする場合の条件については、夫婦の話し合いによって自由に決めることができます。離婚によって、経済的に不安定な状況になる可能性もありますので、離婚条件については、できる限り有利な条件を定めておくことが重要となります。

    離婚に応じてもよいという考えである場合には、すぐにそのことを相手に伝えるのではなく、「こちらの提示する条件に応じるのであれば離婚する」などと提示してみることも有効です。
    法定離婚事由に該当する事情がない場合には、裁判によっても基本的に離婚をすることができませんので、相手がどうしても離婚をしたいと考えている場合には、相手にとって不利な条件であっても応じてくれる可能性があります

3、離婚までの流れ・手順は?

離婚をする場合には、以下のような流れ・手順で進めていくことになります。

  1. (1)協議離婚

    協議離婚とは、夫婦の話し合いによって、離婚をするかどうか、離婚をする場合の条件をどうするかを決める手続きのことをいいます。
    当事者のみの話し合いですべてを決めることができますので、どのような条件にするのかもお互いの合意があれば自由に決めることができます

    話し合いで合意に至った場合には、離婚届に記入をして、それを市区町村役場に提出することによって離婚が成立します。
    詳細な離婚条件を取り決めた場合には、口頭での合意だけで終わらせるのではなく、必ず協議離婚書を作成して、合意した内容を書面で残しておくようにしましょう。

  2. (2)調停離婚

    夫婦の話し合いでは離婚が成立しない場合には、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。
    離婚調停では、家庭裁判所の調停委員が夫婦の間に入って話し合いを進めてくれますので、夫婦が直接顔を合わせて話し合いをする必要がありません。
    そのため、当事者同士では感情的になってしまい話し合いができないという場合であっても、離婚調停を利用することによってスムーズに話し合いができるということがあります。

    ただし、離婚調停も、あくまで合意による解決方法です。
    どちらか一方が離婚を拒否しているような場合には、調停は不成立となってしまいます

  3. (3)裁判離婚

    離婚調停でも解決することができない場合には、最終的に離婚裁判を起こすことになります。
    ただし、裁判で離婚をするためには、基本的に先述した法定離婚事由が必要となります
    法定離婚事由のないケースでは、離婚裁判を起こしたとしても離婚することは難しいでしょう。

    もっとも、別居期間が長期間に及んでいるという場合などでは、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が認められる可能性もあります。
    ご自身のケースで裁判離婚が可能であるかどうかについては、法律の専門家である弁護士に判断を依頼しましょう。

4、離婚の条件や離婚問題のことは弁護士にご相談を

離婚条件や離婚問題でお悩みの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)相手との交渉を任せることができる

    弁護士に依頼をすることによって、相手との交渉をすべて任せることができます。
    離婚をしようと考える状態になった夫婦では、関係が冷え切ってしまっており、お互いに顔を合わせて話し合いをすることが難しい場合が多いといえます。

    そのような状態で話し合いを進めても、お互いに感情的になってしまい、話し合いをまとめることは困難です。
    弁護士が間に入ることによって、冷静に話し合いを進めることができるだけでなく、話し合いをしなければならないというストレスからも解放されるというメリットがあります

  2. (2)法定離婚事由に該当するかどうか判断できる

    離婚に応じたくないという場合には、離婚を拒否することになりますが、法定離婚事由に該当する事情がある場合には、離婚を拒否していたとしても、裁判離婚が認められてしまう可能性があります。
    そのため、離婚するかどうかの方針を判断するためには、まずは自分たちの関係に法定離婚事由に該当する事情が含まれているかどうかを判断することが重要となります。

    法定離婚事由の判断は、法律の専門家である弁護士でなければ正確に判断することが困難です
    また、弁護士に相談をすることによって、今後の具体的な方針についてのアドバイスを受けることもできます。
    相手から離婚を告げられて、お困りの方は、早めに弁護士に相談しましょう。

5、まとめ

相手から離婚請求された場合には、離婚に応じる意思があったとしてもすぐに離婚に応じるのではなく、こちらが希望する離婚条件を提示するなどの交渉をすることが大切です。
ご自身での交渉が負担に感じるという場合には、弁護士が代わりに対応することもできます。

長崎県で離婚に関してお悩みのかたは、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています