「将来に離婚する」という約束は法的に有効? 確実に離婚するためには
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子どもがいる夫婦では、離婚をしたいと思っていても、子どもが大きくなるまでは離婚にふみ切れないことがあります。
そのような夫婦では、「子どもが成人したら離婚する」という約束をする場合もあります。しかし、夫婦間での約束は、法律的に離婚が認められる理由にはならない可能性が高いのです。
本コラムでは、「将来に離婚する」という約束の有効性や離婚に向けた準備などについて、ベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士が解説します。
1、将来離婚する約束は有効とはならない可能性が高い
まず、「将来に離婚する」という約束の法的な有効性について解説します。
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(1)将来離婚するという約束は原則として無効
「離婚をしたい」と思っている夫婦のなかには、以下のような事情からすぐに離婚することが難しく、「将来的に離婚する」という約束を取り決める場合があります。
- 子どもが成人したら離婚する
- 子どもが高校を卒業したら離婚する
- 妻が就職して収入が安定したら離婚する
- 3年後に離婚する
しかし、離婚は、法律上は「身分行為」の一種とされています。
身分行為には、条件や期限を設けることはできません。
そのために、上記のような「将来に離婚する(将来離婚)」という約束を取り決めても、身分行為に条件や期限を付すものであるために、原則として無効とみなされるのです。 -
(2)将来離婚の約束は法定離婚事由のひとつになる可能性がある
将来離婚の約束は、原則として無効であるため、条件が成就したり期限が到来したりしても、直ちに離婚をすることはできません。
しかし、「過去に離婚の合意をしていた」という事実は、訴訟などにおいて法的に離婚を認めるための「法定離婚事由」のひとつとして考慮される可能性があります。
法定離婚事由とは、裁判離婚をする際に必要とされる事情であり、以下の五種類が定められています。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- 強度の精神病にかかり回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
過去に離婚の合意をしていたという事実は、「その時点で婚姻関係が破綻していた」ということを示す事情とみなされて、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として考慮される可能性があります。
「将来離婚の約束があれば、確実に裁判離婚できる」というわけではありませんが、裁判離婚を進めるにあたって有利な事情であるとはいえるのです。
2、裁判離婚以外では、離婚の約束はどう取り扱われるか
離婚の約束は、上記のとおり、裁判離婚では有利に扱われる可能性があります。
以下では、裁判離婚以外の場面において、将来離婚の約束がどのように取り扱われるかについて解説します。
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(1)裁判離婚以外の離婚の方法とは?
離婚の方法には、裁判離婚以外にも、協議離婚と調停離婚という方法があります。
協議離婚とは、夫婦の話し合いによって、離婚するかどうか、離婚条件をどうするのかなどを決めて、離婚届を提出することによって成立する離婚の方法です。
もっとも一般的な方法であり、離婚をする夫婦の多くは、この協議離婚によって離婚をしています。
調停離婚とは、夫婦の話し合いによる協議離婚ができない場合に、裁判所に離婚調停を申し立てて離婚をする方法です。
調停で離婚や離婚条件について合意が成立した場合には、調停成立となり、離婚をすることができます。 -
(2)協議離婚・調停離婚と離婚の約束との関係
協議離婚では、離婚約束の条件が成就して、期限が到来した場合には、相手に対して、将来離婚の約束に従って離婚を求めていくことになります。
その際に相手が離婚に応じてくれればよいですが、離婚を拒否された場合には、将来離婚の約束には法的拘束力がないため、約束に従った離婚を強制することはできません。
過去に約束をしたという事実を根拠にしながら、根気強く話し合いを続けていくしかないでしょう。
調停離婚では、家庭裁判所の調停という手続をとりますが、基本的には、協議離婚と同様に話し合いの手続きになります。
協議離婚の場合と同様に、相手が離婚に応じてくれない場合には、将来離婚の約束に従って強制的に離婚をすることはできません。
このように、裁判離婚以外の離婚方法では、相手が離婚に応じてくれない場合には、将来離婚の約束はほとんど意味のないものとなってしまう可能性があります。
3、将来離婚をすると決めたら、自立の準備を
離婚をすると決めた場合には、将来に向けて準備を進めていくことが大切です。
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(1)経済的自立の準備
離婚後には、まず、経済に関する面で不安を感じるでしょう。
とくに専業主婦の方が離婚する場合には、離婚後は生活費を自分で稼いでいかなければならないため、早めに就職活動などの準備を進めていく必要があります。
なお、離婚前に別居をする場合には、夫婦のうち収入の少ない方が多い方に対して、「婚姻費用」として生活費を請求することができます。
離婚後の経済的な不安を抑えるために、離婚前から忘れずに請求するようにしましょう。 -
(2)住まいの準備
離婚をした場合には、夫婦のうちどちらか一方または双方が、現在生活している住居を出ていくことになります。
実家が近いという方はしばらく実家に身を寄せることもできるでしょうが、そうでない方は、アパートなどを契約するなどして離婚後の住まいの準備を進めていく必要があります。
アパートを借りる場合には、初期費用、引っ越し費用、家具家電の購入費用などの大きな出費が発生します。
そのため、離婚後の生活に向けて、ある程度のお金を確保しておくことも大切です。 -
(3)離婚の証拠収集
相手が離婚に応じてくれない場合には、裁判離婚に発展することも考慮に入れたうえで、離婚に向けて有利な証拠を集めておく必要があります。
たとえば、配偶者が不倫をしている場合には、ホテルに出入りする動画や写真、不倫相手とのメッセージのやり取りなどが不貞行為の証拠になります。
また、配偶者から暴力を振るわれている場合には、医師の診断書や怪我の部位を撮影した写真などが「婚姻を継続し難い重大な事由」の証拠となります。
離婚の約束をした書面も裁判離婚をする際の証拠になりますが、それだけでは法定離婚事由として不十分であるとみなされる可能性もあるため、ほかにも証拠を集めておくことが大切です。 -
(4)子どもがいる場合の準備
子どもがいる場合には、自分だけでなく子どもに関しても準備を進めていく必要があります。
- 子どもの転園、転校先を調べる
- 離婚後の子どもの戸籍や姓について決定しておく
- 離婚後に利用できる子育て支援制度を調べる
夫婦の離婚は、子どもにも大きな影響を与えることになります。
「できる限り近場での引っ越しにとどめて、転園や転校を避ける」など、子どもへの影響を最小限にする方法についても考えておくようにしましょう。
4、離婚問題で弁護士ができること
離婚問題でお悩みの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)離婚に向けたアドバイスを受けることができる
「離婚したい」と思っても、何から手を付ければよいかわからない方も多いでしょう。
そのような場合には、まずは弁護士にご相談ください。
弁護士は、離婚に向けて必要となる準備や離婚する際の条件、証拠収集の方法などについてアドバイスいたします。
事前にしっかりと準備をするほど有利に離婚を進めやすくなるため、できるだけ早い段階から相談することが大切です。 -
(2)相手との交渉の窓口になってもらえる
離婚をする際には、まずは、相手と話し合いながら条件について決定する必要があります。しかし、夫婦の関係が険悪になっている場合には、冷静に交渉することも難しい場合があります。
弁護士に依頼をすれば、弁護士を窓口にして相手と離婚の交渉を進めることができます。
冷静に交渉を進められるようになるほか、相手とのやり取りによって生じる精神的なストレスも、大幅に軽減することができるでしょう。 -
(3)有利な条件で離婚できる可能性が高くなる
離婚にあたっては、親権、養育費、離婚慰謝料、財産分与など、さまざまな離婚条件について取り決める必要があります。
これらの離婚条件については、相場となる金額や決め方などについて一定の基準やルール存在します。
基準やルールを知らないまま交渉を進めてしまうと、不利な条件で離婚に応じてしまうリスクがあります。
弁護士であれば、これらのルールを熟知していますので、有利な条件で離婚をすることができるように相手との交渉を進めていくことができます。 -
(4)離婚調停や離婚裁判の対応も任せることができる
弁護士に依頼をすれば、離婚調停や離婚裁判の対応を任せることができます。
離婚調停では調停の申立てから調停期日への同行などを依頼して、離婚裁判では訴訟提起から期日の対応などを依頼することができるため、一般の方にとっては専門的で難しい裁判手続きも、安心して任せられるでしょう。
5、まとめ
「将来に離婚する」という約束をしていたとしても、法的には効力が認められませんので、相手が離婚を拒否している場合には、離婚の約束に応じて離婚を強制することはできません。
しかし、「過去に離婚の約束をしていた」という事実は、婚姻関係の破綻を証明する事情のひとつとして考慮されて、離婚裁判では有利な事情のひとつとして考慮される可能性があります。
離婚にあたっては、相手と交渉しながら、さまざまな条件について取り決めを行う必要があります。
少しでも有利な条件による離婚を希望する方は、早い段階から、弁護士によるサポートを受けましょう。
離婚に関してお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています