離婚調停の申立書と必要書類とは? 流れや弁護士に相談するメリット
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令和5年の長崎市の婚姻件数は1374件、離婚件数は595件でした。
当事者間での離婚に関する話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てましょう。離婚調停の申立てに当たっては、申立書に必要な事項を記載し戸籍謄本などの添付書類を提出する必要があります。弁護士に依頼すれば、申立書や必要書類をスムーズに準備することが可能です。
本記事では離婚調停について、申立書その他の必要書類や、手続きの流れなどをベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士が解説します。


1、離婚調停とは?
「離婚調停」とは、家庭裁判所において離婚に関する話し合いを行う手続きです。「夫婦関係調整調停(離婚)」とも呼ばれています。
調停の詳しい内容や訴訟との違い、調停を申し立てるべきケースについて解説します。
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(1)離婚調停の内容
離婚調停では、離婚に関すること全般につき、家庭裁判所が選出した2名の調停委員(正式名称:家事調停委員)を介して話し合います。調停委員は、弁護士などの専門的知識を持つ民間人から男女1名ずつ選出されるのが一般的です。
当事者である夫婦間では、そもそも離婚するかかどうか、もしくは離婚の条件についてお互いの主張が対立しているケースも少なくありません。このような夫婦間のずれを調整し、合意による解決を図ることが離婚調停の目的です。
調停委員は、夫と妻をそれぞれ個別に呼び出して話を聞きます。双方の主張が食い違っている部分を整理した上で、状況に応じて歩み寄りを促すなどして合意形成をサポートします。
夫婦間で離婚の合意が調った場合は、その条件が記載された調停調書が作成されて、調停離婚が成立します。 -
(2)離婚調停と離婚訴訟の違い
離婚調停は、調停委員を介して夫婦間の主張をすり合わせ、合意形成を目指す話し合いの手続きです。夫婦の合意が得られなければ、調停離婚は成立しません。
これに対して離婚訴訟では、判決によって強制的に離婚が成立することもあり得ます。不貞行為や一定期間の別居などの法定離婚事由が認められれば、原則として離婚を成立させる判決が言い渡されます。
なお、離婚訴訟には「調停前置主義」が採用されており、原則として、訴訟する前に離婚調停を申し立てなければなりません(家事事件手続法第257条第1項)。
離婚調停において夫婦間の合意が得られず、調停不成立となった場合に、引き続き離婚を求めるときは離婚訴訟を提起するという流れになります。 -
(3)離婚調停を申し立てるべきケース
離婚調停の申立てに適しているのは、以下のようなケースです。
- 離婚したいが、相手が離婚を拒否している
- 離婚すること自体はお互いに異存ないが、離婚条件について主張が食い違っている
- 離婚条件に強制力を持たせたい(調停調書が作成されれば、不履行時に強制執行の申立てができる)
基本的には、まず話し合い(=離婚協議)によって解決を図り、まとまらなければ離婚調停を申し立てるのがよいでしょう。ただし、話し合いをすること自体は難しい場合や、感情的な議論になることが明らかな場合は、最初から離婚調停で議論をするのがよいかと思われます。
2、離婚調停の申立ての必要書類
離婚調停の申立てに当たっては、申立書および添付書類を家庭裁判所に提出する必要があります。
離婚調停の申立ての必要書類は、以下のとおりです。
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(1)申立書|収入印紙1200円分を貼付
離婚調停申立書には、主に以下の事項を記載します。
- 申立人(自分)相手方(配偶者)に関する情報
- 子どもに関する情報
- 離婚を求める旨
- 求める離婚条件の内容
- 離婚を希望するようになった経緯
裁判所のウェブサイト「夫婦関係調整調停(離婚)の申立書」に申立書の記入例が掲載されているので、参考にしてください。また、弁護士に依頼すれば申立書の作成の代行も可能です。
申立書に的確に状況を記載することで、調停の初動から争点を明確にすることができ、ひいては早期解決に繋がります。
離婚調停の申立書には、収入印紙1200円分を貼付する必要があります。収入印紙は、郵便局は裁判所の売店などで購入可能です。 -
(2)連絡用の郵便切手
離婚調停を申し立てる際には、家庭裁判所に連絡用の郵便切手を予納する必要があります。
郵便切手の額は数百円から1000円分程度で、券種(=切手の種類)の内訳が決まっています。家庭裁判所の窓口で確認して、指示された内訳の郵便切手を提出しましょう。 -
(3)夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
離婚調停の申立てに当たっては、家庭裁判所に夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)を提出する必要があります。
夫婦の戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場で取得できます。令和6年3月からは本籍地が遠方であっても最寄りの役所で取得できるようになりましたので、役所の窓口に問い合わせてみましょう。
なお、婚姻中であれば、夫婦が同じ戸籍に入っているので、提出する戸籍謄本は1通です。 -
(4)年金分割のための情報通知書
離婚調停において年金分割を求める場合は、年金分割のための情報通知書を提出する必要があります。
年金分割とは、婚姻中の厚生年金保険(または共済年金)の加入記録を夫婦間で公平に分ける手続きです。夫婦のいずれかが、婚姻中に会社員や公務員などであった場合は、年金分割の対象となります。
年金分割のための情報通知書は、年金事務所や共済年金制度の窓口で交付を受けることができます。 -
(5)主張内容に関連する資料
離婚調停において主張する内容については、関連する資料を裁判所に提出しましょう。
(例)
- 相手の不貞行為を主張する場合:不貞行為や自宅・ホテルなどに出入りする場面の写真や映像、探偵の浮気調査報告書など
- 財産分与を求める場合:婚姻中に取得した財産に関する資料(預貯金通帳、不動産の登記事項証明書など)
- 親権の獲得を希望する場合:子どもの養育を自分が主に担っていることが分かる資料(育児メモ、保育園の連絡帳など)
提出した資料により、自分の主張が妥当であることを調停委員に理解してもらうことができれば、離婚調停を有利に進められます。
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(6)非開示の希望に関する申出書
申立書を除く提出書類の一部に、家庭裁判所に知らせる必要があるものの、相手方には知られたくない情報が記載されている場合は、非開示の希望に関する申出書を提出します。
非開示の希望に関する申出書の書式や提出方法は、最高裁判所のホームページ内の盛岡地裁のページ「非開示の希望に関する申出について」に掲載されています。 -
(7)その他|家庭裁判所の指示に従って提出する
上記のほか、家庭裁判所に指示された書面を提出しましょう。
一例として、以下のような書面の提出を指示されることがあります。最寄りの家庭裁判所のホームページで事前に確認することをおすすめします- 事情説明書
- 連絡先などの届出書
- 進行に関する照会回答書
お問い合わせください。
3、離婚調停の流れ
離婚調停の手続きの流れは、以下のとおりです。
以下、それぞれの手続きについて解説します。
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(1)申立書と添付書類の提出
まずは、家庭裁判所に申立書と添付書類を提出します。
提出先は原則として、相手方の住所地の家庭裁判所です。ただし、夫婦間で合意すれば、別の家庭裁判所に対して申立てを行うこともできます。 -
(2)第1回調停期日の決定
離婚調停の申立てを受理した家庭裁判所は、第1回調停期日を指定して各当事者に通知します。
指定された期日の都合が悪い場合は、家庭裁判所にその旨を伝えれば期日を変更してもらえます。無断欠席は避け、必ず事前に家庭裁判所へ連絡しましょう。 -
(3)調停期日での話し合い
調停期日では、2名の調停委員が夫婦双方の言い分を聞き取り、歩み寄りを促すなどして合意形成をサポートします。
1回の調停期日はおおむね2時間程度で、話し合いが可能な限り、複数回にわたって続行されます。婚成立に至る場合は、平均して5~6回程度の調停期日が行われます。ケース・バイ・ケースですが、約半年~1年ほどかかるのが一般的です。 -
(4)調停成立または不成立
夫婦間で離婚の合意が調った場合は、調停離婚が成立します。
この場合、合意した離婚条件が記載された調停調書が作成されます。調停調書に記載された義務を相手方が履行しない場合は、裁判所に強制執行を申し立てることができます。
これに対して、夫婦間の主張が大きく食い違っており、合意形成が困難と思われる場合には、調停が不成立となって終了します。 -
(5)調停不成立の場合|審判や離婚訴訟へ移行
調停不成立となった場合には、裁判所の判断で離婚を成立させる審判が行われることがあります。
たとえば、ほとんどの論点については合意できているものの、一部の細かい離婚条件についてのみ夫婦の主張が食い違っている場合などには、審判が行われるケースが多いです。
審判に対して不服がある場合は、審判書の送達を受けた日から2週間以内に限り異議を申し立てることができます。適法な異議の申立てがあったときは、審判は効力を失います。適法な異議の申立てがなければ審判が確定し、審判離婚が成立します。
調停離婚も審判離婚も成立しなかった場合に、引き続き離婚を求めるときは、家庭裁判所に離婚訴訟を提起しましょう。
4、離婚調停について弁護士に相談する4つのメリット
離婚調停を申し立てる際には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。
- 離婚調停の進め方や準備についてアドバイスを受けられる
- 法的な根拠に基づく主張を事前に準備でき、離婚調停を有利に進められる
- 調停の同席も可能なため、調停委員に適切な主張ができる
- 審判や訴訟に移行する際にも、スムーズに対応できる
弁護士のサポートを受けることにより、離婚調停にスムーズに対応できるでしょう。離婚調停の申立てを検討している方は、お気軽に弁護士にご相談ください。
5、まとめ
離婚調停の申立てに当たっては、申立書をはじめとしてさまざま書類を準備する必要があります。適切に準備を整えて、離婚調停を有利に進めるためにも、法的知識を有する弁護士のサポートを受けると安心です。
また、話し合い(協議)段階から、離婚問題の実績が豊富な弁護士がサポートすることで、相手との話し合いがまとまるケースも少なくありません。
ベリーベスト法律事務所は、離婚に関するご相談を随時受け付けております。離婚協議がまとまらずに悩んでいる方や、離婚調停の申立てをご検討中の方は、まずはベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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