子どもが学校で事故に遭ったとき、補償を受けるための方法
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学校生活では、授業や部活、課外活動などで、事故や災害が生じることがあります。
子どもがこのような学校事故に巻き込まれて、ケガをしてしまったという場合には、「災害共済給付制度」などを利用して補償を受けることができます。また、子どもにケガや後遺症が生じた場合には、学校や加害者の責任を追及することも検討しましょう。
本コラムでは、子どもが学校事故に遭った場合に補償を受ける方法や、学校などの責任を追及する方法について、ベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士が解説します。
1、学校事故で受けた損害の補償を受けるための流れ
学校事故で子どもに損害が生じた場合には、以下のような流れで、補償を受けることができます。
- ① 学校事故の発生
- ② ケガの治療
- ③ 症状固定(障害診断書の作成)
- ④ 障害等級認定の申請
- ⑤ 日本スポーツ振興センターの災害共済救済制度からの補償
- ⑥ 学校、加害者、教師との示談交渉
- ⑦ 学校、加害者、教師に対する民事訴訟の提起
① 学校事故の発生
学校事故が発生したら、必ず学校に報告をしましょう。
報告を受けた学校は、教育委員会に災害報告書を提出します。
この災害報告書が、学校で事故が起こったという事実を証明する書類になります。
② ケガの治療
学校事故でケガをした場合には、すぐに病院に行きましょう。
学校事故から時間がたってしまうと、事故とケガとの因果関係が否定され、治療費等の損害を請求できなくなる可能性がある点に注意してください。
③ 症状固定
ケガが完治せず、これ以上治療を続けても改善の見込みがない状態を「症状固定」といいます。
症状固定後は、障害等級の申請に向けて、医師に障害診断書を作成してもらいましょう。
④ 障害等級の申請
学校事故によって後遺症が生じた場合には、日本スポーツ振興センターに障害等級申請を行うことができます。
⑤ 日本スポーツ振興センターの災害共済救済制度からの補償
学校事故でケガをした場合には、日本スポーツ振興センターの災害共済救済制度から補償を受けることができます。
⑥ 学校、加害者、教師との示談交渉
学校事故の発生について、学校や加害者、教師などに責任がある場合には、示談交渉を通じて損害賠償を請求しましょう。
⑦ 学校、加害者、教師に対する民事訴訟の提起
示談交渉をしても合意が成立しない場合には、損害賠償を請求するために、裁判所に民事訴訟を提起しましょう。
2、日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度とは
学校事故で子どもがケガをした場合には、スポーツ振興センターの災害共済給付制度から補償を受けることができます。
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(1)日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度とは
日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度とは、学校管理下で生じた学校事故に対して、医療費、障害見舞金などの給付を行う制度です。
災害共済給付制度では、学校事故に関して学校側の過失が要件とされていませんので、責任の所在が曖昧であるケースであっても利用することができます。
学校側に責任がある場合でも、責任の追及には時間と労力を要しますので、まずは災害共済給付制度から補償を受けるとよいでしょう。
なお、災害共済給付を受ける権利は、給付事由が生じた日から2年が経過すると時効によって権利が消滅します。
医療費については受診した月ごとに時効が進行し、障害見舞金については症状固定日から時効が進行します。どちらについても、早めに請求するようにしましょう。 -
(2)災害共済給付制度の補償内容
災害共済給付制度を利用することによって、以下のような補償を受けることができます。
① 医療費
学校管理下で発生した災害によりケガを負った場合には、医療費の総額の10分の4に相当する金額が支払われます。
たとえば、ケガを治療するのに10万円かかった場合には、4万円が日本スポーツ振興センターから支払われることになります。
② 障害見舞金
日本スポーツ振興センターに障害等級申請をして、障害等級認定を受けた場合には、障害見舞金が支払われます。
障害見舞金の金額は、認定された等級(1級から14級)に応じて、4000万円から82万円となっています。
③ 死亡見舞金
学校事故によって子どもが死亡してしまった場合には、日本スポーツ振興センターから死亡見舞金が支払われます。
死亡見舞金の金額は、3000万円または1500万円です。 -
(3)災害共済給付制度の利用手続き
災害共済給付制度を利用する場合には、まずは保護者が医療機関などで医療費の証明を受けて、それを学校に提出する必要があります。
その後に、学校が、ケガの発生状況の報告書と保護者から提出された医療費の証明書を日本スポーツ振興センターに提出することになります。
そして、日本スポーツ振興センターが必要な審査を行ったうえで、支払要件に該当すると判断された場合には、災害共済給付金が支払われるのです。
3、後遺症がある場合には障害等級認定を
学校事故によって後遺症が生じてしまった場合には、日本スポーツ振興センターに障害等級の申請を行いましょう。
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(1)障害等級認定の申請とは
学校事故によってケガをしてしまった場合には、病院でケガの治療を行うことになります。しかし、ケガの内容や程度によっては、治療を継続したとしてもこれ以上改善しない状態になることがあります。
このような状態を「症状固定」といい、症状固定時に残存している症状については、日本スポーツ振興センターの障害等級認定を受けることができます。
障害等級認定の申請を行うと、日本スポーツ振興センターで審査が行われます。
審査の結果、障害に該当すると認められたら、障害の内容および程度に応じて、第1級から第14級までの障害等級が認定されます。 -
(2)障害等級認定に不服がある場合には不服審査請求が可能
日本スポーツ振興センターによる障害等級認定結果に納得ができないという場合には、不服審査請求を行うことができます。
ただし、不服審査請求を行うためには、障害等級認定結果の通知を受けたときから60日以内に手続を行う必要があります。
また、単に納得ができないという理由だけで不服審査請求をしたとしても、結果が覆る可能性は低いといます。
当初の申請と同じ証拠を提出しても同じ結果となるため、不服審査請求をする際には、新たな診断書や検査結果などを添付する必要があります。
なお、不服審査請求でも納得いく結果にならなかった場合には、裁判所に訴訟を提起して、裁判所に判断してもらうことになります。
いずれの方法でも専門的知識が不可欠となるので、適切な障害等級認定を目指すために、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
4、学校や加害者、教師に責任を問うことは可能?
以下では、子どもが学校事故でケガをした場合に、学校や加害者、教師などの責任を問うことができるかどうかについて解説します。
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(1)学校の責任
学校には、子どもの生命および健康を危険から守るよう配慮する義務(安全配慮義務)が課されています。
学校側が事故防止措置など安全配慮義務を怠ったことにより、子どもに被害が生じた場合には、学校の責任を問うことができます。
国公立学校の場合には、学校を管理するのは国または地方公共団体であるため、学校側の責任を問う場合には、国または地方公共団体が責任を追及する対象になります(国家賠償法1条)。
私立学校の場合には、当該学校の設置者である学校法人に責任を問うことになります。
いずれにしても、大きな組織である自治体や学校法人を相手に責任を追及することは個人では難しいため、専門家である弁護士のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。 -
(2)加害者の責任
学校事故で加害者がいる場合には、加害者に対して責任追及をすることも検討できます。
しかし、学校事故の場合、加害者になるのは未成年者の子どもであることが多く、年齢によっては加害者本人には責任能力が認められないことがあります(民法712条)。
このような場合には、責任能力のない加害者に代わって、加害者の保護者に対して責任追及をすることができます(民法714条1項)。
また、加害者に責任能力があったとしても、未成年である加害者には賠償金を支払うだけの十分な資力がないことが一般的です。このような場合にも、加害者に対する責任追及と併せて、保護者への責任追及をすることになるでしょう。
加害者の責任を問う場合には、誰を請求の対象とするのかなどの選択が重要になります。
実際には加害者にも保護者にも責任を問うことができない場合もあるので、まずは弁護士に相談して、アドバイスを受けるようにしましょう。 -
(3)教師の責任
教師の故意または過失によって学校事故が発生した場合には、教師に対して、責任追及することも検討できます。
しかし、国公立学校の教師による学校事故については、学校を管理する国または地方公共団体に責任が生じますので、教師個人に対して責任追及をすることはできません。
私立学校の場合には、国公立学校のような制限はないため、教師に対して直接に損害賠償を請求できる可能性があります。
5、まとめ
学校事故が生じた場合には、日本スポーツ振興センターの災害共済救済制度から補償を受けることができます。
また、事故の責任が学校にある場合には、学校側との示談交渉や裁判などによって、損害賠償を請求することができます。
しかし、個人で自治体や学校法人という大きな組織を相手にして交渉や裁判をすることは難しいため、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
子どもが学校事故によってケガをしてしまい、補償や損害賠償の請求についてお悩みのかたは、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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