週6勤務は法律上問題ない? 割増賃金が発生するケースを解説

2023年06月15日
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週6勤務は法律上問題ない? 割増賃金が発生するケースを解説

令和3年度に長崎県内の総合労働相談コーナーに寄せられた労働に関する相談は3841件でした。

労働基準法上、休日は週1日以上付与すればよいとされているため、法律的には週6日勤務も認められます。ただし、各日の労働時間によっては時間外労働が生じて、割増賃金(残業代)が発生する場合があります。

割増賃金が未払いとなっているケースも多いため、「週6日勤務なのに残業代が少ない…」と感じられている方は、一度弁護士に相談することを検討してみてください。

本コラムでは、週6日勤務について、労働基準法上の取り扱いや賃金の計算方法と計算例などを、ベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士が解説します。

1、週6日勤務は法律上問題ないのか?

多くの会社は土日休みなどの週5日勤務であるため、「週6日勤務は激務だ」という印象を持たれがちです。

労働基準法上は、労働者を週6日勤務させることも可能とされています。
ただし、週間の労働時間がトータルで長い場合には、労働基準法違反に当たる可能性がある点に注意してください。

  1. (1)労働基準法における休日のルール

    会社の経営者などの使用者には、労働者に対して、週1日以上または4週間を通じて4日以上の休日を与えることが義務付けられています(労働基準法第35条第1項、第2項)。

    この労働基準法の規定により、使用者に付与が義務付けられている休日は、「法定休日」といいます。
    これに対して、法定休日以外の休日は「法定外休日」または「所定休日」と呼ばれます。

    法定休日は、労働基準法上に基づき必ず付与しなければなりません
    一方、法定外休日は労働契約や就業規則などに基づいて付与されるものであり、定めがなければ付与しなくても構いません。

    週6日勤務の場合、法定休日として週1日の休日が確保されています。
    法定外休日は付与されませんが、法定休日に関する規制との関係では、労働基準法違反には当たりません。

    なお、会社が労働組合(または労働者の過半数を代表する者)との間で労使協定(36協定)を締結すれば、労働者を法定休日に働かせることもできます(労働基準法第36条第1項)。

  2. (2)労働基準法における労働時間のルール

    労働基準法の下で週6日勤務が認められるか否かを検討する際には、休日に関するルールのほか、労働時間に関するルールも確認する必要があります。

    労働時間の上限は、原則として「1日当たり8時間・1週間当たり40時間」とされています(労働基準法第32条第1項、第2項。ただし、変形労働時間制などの例外あり)。
    これを「法定労働時間」といいます。

    法定労働時間の規制は、1週間の勤務日数にかかわらず適用されます。
    週6日勤務の場合、たとえば6日とも1日当たり8時間働くと、1週間の労働時間が48時間となり、法定労働時間を8時間超過します。

    会社が労働者に時間外労働(法定労働時間を超える労働)をさせるには、36協定の締結が必要です
    また、時間外労働の時間数は、36協定で定められた上限時間の範囲内とする必要があります。
    36協定を締結していないにもかかわらず時間外労働をさせることや、36協定の上限時間を超過して時間外労働をさせることは労働基準法違反となります。

  3. (3)週6日勤務も法律上は可能|ただし労働時間を要チェック

    上記の休日・労働時間に関する規制をふまえると、週6日勤務については以下のように整理され、「労働基準法上認められる場合もある」ということになります。

    • 法定休日が週1日確保されているので、休日に関する規制に違反しない
    • 各日の労働時間を調整し、法定労働時間の範囲内に収めれば、労働時間に関する規制に違反しない
    • 法定労働時間を超過する場合でも、36協定を締結した上でその上限時間の範囲内に収めれば、労働時間に関する規制に違反しない


    ただし、実際の労働時間や36協定の締結状況などによっては、週6日勤務が労働基準法違反に当たることもあり得ます。
    とくに週6日勤務であるにもかかわらず、毎日長時間の労働を強いられている場合には、労働基準法違反の可能性が高いといえるでしょう

2、週6日勤務の賃金を計算する方法

労働者が会社から受け取るべき賃金は、以下の3種類に大別されます。

  • ① 基本給
  • ② 各種手当
  • ③ 残業代(法定内残業・時間外労働・休日労働・深夜労働)


基本給の金額と、各種手当の種類・内容・金額は、労働契約の定めに従って決まります。これに対して、残業代の金額は、時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数などに応じて変動します。

以下では、週6日勤務の労働者が会社から受け取るべき残業代の計算方法を解説します。

  1. (1)残業代の割増賃金率

    残業代は、「法定内残業」「時間外労働」「休日労働」「深夜労働」の四つの残業(労働)について発生します。

    ① 法定内残業
    基本給に対応して会社が定める労働時間(=所定労働時間)を超え、法定労働時間を超えない部分の残業です。

    ② 時間外労働
    法定労働時間を超える部分の残業です。

    ③ 休日労働
    法定休日における労働です。
    なお法定外休日における労働は、法定内残業または時間外労働として取り扱われます。

    ④ 深夜労働
    午後10時から午前5時までに行われる労働です。


    法定内残業に対しては通常の賃金が発生しますが、時間外労働・休日労働・深夜労働については、以下の割合による割増賃金が発生します。

    法定内残業 通常の賃金
    時間外労働 通常の賃金×125%
    ※月60時間を超える時間外労働については通常の賃金×150%
    休日労働 通常の賃金×135%
    深夜労働 通常の賃金×125%
    時間外労働かつ深夜労働 通常の賃金×150%
    ※月60時間を超える時間外労働については通常の賃金×175%
    休日労働かつ深夜労働 通常の賃金×160%
  2. (2)割増賃金(残業代)の計算式

    会社に対して請求できる残業代は、以下の式によって計算します。

    残業代=1時間当たりの基礎賃金×割増率×残業時間数
    1時間当たりの基礎賃金=1か月の総賃金(以下の手当を除く)÷月平均所定労働時間

    <総賃金から除外される手当>
    • 時間外労働手当、休日手当、深夜手当
    • 家族手当(扶養人数に応じて支払うものに限る)
    • 通勤手当(通勤距離等に応じて支払うものに限る)
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当(住宅に要する費用に応じて支払うものに限る)
    • 臨時に支払われた賃金
    • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

3、週6日勤務の賃金計算例

以下の設例について、週6日勤務の労働者が受け取れる賃金(月額)を計算してみましょう。

<設例>
  • 基本給:40万円
  • 役職手当:5万円
  • 住宅手当:5万円
  • 月平均所定労働時間:173・8時間
  • 所定労働時間:月曜から金曜は7時間、土曜は5時間
  • 時間外労働:30時間
  • 休日労働:10時間
※深夜労働はなし


上記の設例では、基本給・役職手当・住宅手当で合計50万円を受け取れます。これに加えて、時間外労働手当と休日手当が発生します。

まずは、1時間当たりの基礎賃金を求めましょう。
住宅手当5万円は基礎賃金から除外されるので、1時間当たりの基礎賃金は約2589円(=45万円÷173・8時間)です。

時間外労働の割増率は通常の賃金に対して125%、休日労働の割増率は通常の賃金に対して135%です。
したがって、時間外労働手当は9万7094円(=45万円÷173・8時間×125%×30時間)、休日手当は3万4954円(=45万円÷173.8時間×135%×10時間)となります。
※小数点以下は四捨五入

基本給・役職手当・住宅手当・時間外労働手当・休日手当を合計すると、設例において受け取れる賃金(月額)は、以下の通りになります。

賃金(月額)
=40万円+5万円+5万円+9万7094円+3万4954円
=63万2048円

4、長時間労働・残業代の未払いについては弁護士に相談を

週6日勤務の企業では、一般的な土日休みの企業に比べて休日の日数が少ない分、長時間労働が慢性化しがちです。
過度な長時間労働は労働基準法違反に当たり得るほか、会社の労務管理が不適切な場合には未払い残業代が発生しているケースもあります。

週6日勤務であるにもかかわらず、毎日長時間労働を強いられており、残業代もほとんど支払われていないような場合には、弁護士に相談することをおすすめします
弁護士は、労働基準法・労働契約の定めや実際の労働状況などをふまえて、会社の取り扱いに違法状態が生じていないか、未払い残業代を請求できないかなどを検討することができます。
また、もし違法状態が生じていれば、会社に対して速やかに是正するよう弁護士から要求することもできます。
さらに、未払い残業代が発生している場合には、交渉・労働審判・訴訟などの請求のための手続きも、弁護士がサポートします。

長時間労を強いられている方は、お早めに、弁護士にご相談ください

5、まとめ

週6日勤務は、労働基準法のルールの範囲内で認められる場合もあります。

ただし、各日の労働時間が長い場合には労働基準法違反に当たり得るほか、未払い残業代が発生している可能性があります。
もし週6日勤務で長時間労働を強いられている場合は、弁護士に相談することを検討してください。

ベリーベスト法律事務所は、会社とのトラブルに関するご相談を随時受け付けております。長時間労働が慢性化している方や会社に対して未払い残業代を請求したい方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています