交通事故後に相手の保険屋から電話があった場合の対応を解説
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長崎県警察が公表している交通事故の統計資料によると、令和3年に長崎県内で発生した交通事故の発生件数は、2805件でした。長崎県内での交通事故発生件数は、平成25年の7165件をピークとして徐々に減少しています。
交通事故の被害に遭った場合には、その後のやり取りは、加害者側の保険会社との間で行っていくことになります。加害者側の保険会社とのやり取りは、連絡が来るタイミングによって内容も異なってきます。適切に対応するためには、どのような連絡がくるのかをあらかじめ知っておく必要があるのです。
本コラムでは、交通事故の被害者が相手の保険屋から電話で連絡される内容や、相手の保険会社から連絡がこない場合の対応について、ベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故後、保険会社から電話がくるタイミング
交通事故の被害に遭われた方は、事故で負ったケガを治療すると共に、加害者との間で今後の治療費の支払いや車の修理費の支払いなどについて話し合う必要があります。
この話し合いを「示談交渉」と呼びます。
通常の場合は、自動車の運転手は任意保険に加入していますので、加害者側との示談交渉は加害者本人ではなく保険会社の担当者を相手にして行うことになります。
一般的には、以下のようなタイミングで、加害者側の保険会社から電話が来ることになります。
- 交通事故直後
- 治療中
- 症状固定時
- 示談交渉時
2、保険会社からの連絡内容
保険会社からの電話連絡の内容は、連絡がくるタイミングによって異なってきます。
以下では、保険会社から電話連絡がくる状況ごとに、その連絡内容を解説します。
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(1)交通事故直後
相手の保険会社からの最初の連絡は、交通事故の翌日または数日後に来るでしょう。
保険会社の担当者からは、担当に就任したことのあいさつと、今後の手続きの流れについて説明がなされます。
交通事故に遭った場合には、けがの治療のために病院に通院をすることになります。
病院への治療費については、通常、相手の保険会社から支払いがなされます。
そのため、保険会社から電話で連絡される際には、どこの病院に通院をしているのかを聞かれることになるでしょう。 -
(2)治療中
交通事故のけがの治療中にも、相手の保険会社から定期的に連絡されます。
治療中の電話連絡は、主に、治療状況の確認のために行われるものです。
保険会社から治療状況を確認された場合には、現在の治療状況について説明をしましょう。
また、治療を開始してから一定の期間が経過すると、保険会社から治療費の打ち切りを提案されることがあります。
保険会社からの提案は、あくまでも「治療費」の打ち切りにすぎないため、治療自体の中断を求めているわけではありません。
医師と相談したうえで、今後も治療継続の必要性があるという場合には、その旨を保険会社の担当者に伝えて、引き続き治療費の支払い対応をしてもらえるように求めていきましょう。 -
(3)症状固定時
交通事故で負ったケガは、治療を継続しても、これ以上改善が見込めない状態になることがあります。
このような状態を「症状固定」といいます。
そして、症状固定時に残存している症状については、後遺障害等級が認定される可能性があります。
後遺障害等級の認定を申請する手続きは、相手側の保険会社を経由して行う「事前認定」と、被害者側で行う「被害者請求」という2つの方法があります。
保険会社の担当者からは、どちらの方法で等級認定を申請するか、確認の連絡がくることになります。
また、事前認定の方法で行う場合には、後遺障害診断書の取得など今後の手続きについての説明されることになるでしょう。 -
(4)示談交渉時
治療がすべて終了した段階で、相手の保険会社から事故に対する賠償額の提案がなされます。
賠償額の提案は、基本的には書面で送られてきますが、書面が届いたタイミングで示談内容の説明のための電話連絡がくることもあります。
また、示談の提案内容に不満がある場合には、相手の保険会社との間で交渉をしていくことになりますが、その場合には、何度か保険会社の担当者と電話でやり取りをしていかなければなりません。
3、相手の保険会社から連絡が来ないときすべきこと
以下では、保険会社の担当者から連絡が来ないときに、被害者がとるべき対応を解説します。
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(1)相手の保険会社から連絡が来ない理由
相手の保険会社から連絡が来ない理由としては、以下の理由が考えられます。
- ① 加害者が任意保険に加入していない
加害者が任意保険に加入していない場合には、基本的に、相手の保険会社からの連絡が来ることはありません。
自賠責保険は強制保険であるために車を所有している方は原則として必ず加入していますが、任意保険に加入するかどうかは自由であるため、加害者が任意保険に加入していないということもあります。
そして、任意保険とは異なり、自賠責保険では担当者が示談交渉を行う、ということはありません。
したがって、加害者が自賠責保険にしか入っていなかった場合には、示談交渉の相手は加害者本人となるのです。
- ② 加害者から事故の連絡を受けていない
加害者が保険会社に対して事故の連絡が行っていない場合には、保険会社としては事故が発生したという事実を把握できていないため、被害者に連絡することができません。
また、加害者から保険会社に事故の連絡をしていたとしても、保険会社の担当者が多忙であるために対応が遅れているという場合もあります。
- ③ 損害賠償義務がないと判断している
交通事故の示談交渉においては、事故の状況に応じて、当事者双方に過失割合が振り分けられることになります。
たとえば、停止中に追突したようなケースでは、追突をした運転者の一方的な過失となりますので、基本的に過失割合は100:0となります。
他方で、交差点での出合い頭衝突事故などにおいては、事故の状況に応じて、被害者にも過失が生じることになります。
保険会社の担当者は、加害者から連絡を受けて事故の内容を判断することになります。
そして、加害者の伝え方によっては、「加害者側に過失がないために保険会社として損害賠償義務がない」と判断してしまっている可能性も考えられるのです。
- ① 加害者が任意保険に加入していない
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(2)相手の保険会社から連絡が来ない場合の対応方法
相手の保険会社から連絡が来ない場合には、以下のような対応が考えられます。
- ① 被害者から保険会社に連絡する
事故から数日たっても相手の保険会社から連絡がないという場合には、被害者から相手の保険会社に連絡をしてみるとよいでしょう。
加害者から事故の連絡がないという場合には、被害者が相手の保険会社に連絡することで、相手の保険会社が加害者に連絡をとって確認をしてくれる可能性があります。
また、担当者が多忙で連絡ができていないという場合には、被害者から催促の連絡があったことによって、その後の対応が変わってくる場合もあるでしょう。
なお、相手の保険会社が不明であるという場合には、加害者に直接に確認してください。
連絡先については事故直後に加害者と被害者との間で交換するのが一般的です。
もし連絡先の交換ができていない場合には、警察が発行する交通事故証明書に加害者の連絡先が記載されているので、それを参照するようにしましょう。
- ② 保険会社の苦情受付窓口に連絡する
保険会社の担当者によっては、何十件もの案件を抱えているため十分に対応することができていない、という可能性もあります。
また、担当者によっては被害者に対して誠実な態度を取らないために、頻繁に連絡をしてこないという場合もあるのです。
担当者の対応に不満を感じる場合には、保険会社の苦情受付窓口に連絡をしてみるとよいでしょう。
苦情の内容によっては、担当者の変更をしてもらうことができ、状況が改善されることもあります。
- ① 被害者から保険会社に連絡する
4、電話対応するとき気を付けるべきポイント
保険会社の担当者との電話対応においては、以下の点に気を付けるようにしましょう。
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(1)疑問があれば必ず確認をする
保険会社の担当者は、日常的に交通事故の事案を扱っているため、ついつい専門用語を使って話をする傾向があります。
しかし、交通事故の被害者は、交通事故に遭うことが初めてという方が大半でしょう。
そのため、普段使わない専門用語を使われて話をされても、内容を理解できないことがあります。
保険会社の担当者の話がよくわからないまま適当に相づちを打っていると、不利な内容で手続きが進められてしまう可能性があります。
少しでもわからない言葉があれば、その言葉の意味を確認するようにしましょう。 -
(2)保険会社の主張を安易に受け入れない
相手の保険会社は、被害者に対して賠償金を支払う立場にあるため、通常は「少しでも支払う金額を抑えたい」と考えています。
したがって、加害者側の過失割合を少なく主張してきたり、示談金を実際の損害賠償よりも少なめに提案してきたりすることもあるのです。
保険会社の担当者は経験豊富なため、担当者の説明を受けていると、被害者としては正当な主張のように聞こえてしまうことがあります。
そのため、不利な内容で示談を提案されても、被害者としては「不利である」という事態に気付くことができないおそれがあるのです。
適切な内容で示談するためには、保険会社の主張を安易に受け入れるのではなく、被害者側でもその主張の正当性をしっかりと吟味することが大切です。
ご自身で判断することが難しいという場合には、専門家である弁護士に相談することも検討してください。
5、対応に困ったときは弁護士に相談を
保険会社との対応に困った場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)保険会社との対応をすべて任せることができる
交通事故の事案を弁護士に依頼すれば、面倒な保険会社とのやり取りをすべて弁護士に任せることができます。
保険会社からの電話連絡は、保険会社の営業時間内に来るため、通常は平日の日中です。
ほとんどの方にとっては、仕事や家事などで手が離せないタイミングで電話がかかってくるでしょう。
そして、電話がくるたびに折り返し連絡をしなければならないという事態は、ストレスや精神的負担を生じさせます。
また、専門用語を羅列して説明をされても、ほとんどの方が十分に理解することができず、不利な条件であるにもかかわらず示談に応じてしまうこともあります。
弁護士に示談交渉を一任することで、このような負担やリスクを回避できます。 -
(2)慰謝料を増額することができる可能性がある
交通事故によってけがをした場合には、傷害慰謝料(入通院慰謝料)が、後遺障害が生じた場合には、後遺障害慰謝料が支払われます。
しかし、慰謝料の算定基準には、3つの基準(自賠責保険基準、任意保険基準、裁判基準)があり、どの基準を使うかによって、慰謝料の金額が大きく異なってきます。
最も慰謝料の金額が高額になる基準は「裁判基準(弁護士基準)」ですが、裁判基準を使って示談交渉をすることができるのは、弁護士に依頼をした場合に限られています。
慰謝料を増額するためにも、示談交渉は弁護士に依頼しましょう。
6、まとめ
交通事故の被害に遭うと、事故直後、治療時、症状固定時、示談交渉時などのさまざまなタイミングで相手の保険屋から電話がかかってくることになります。
相手の保険屋とのやり取りにあたっては、交通事故に関する知識や経験が必要になるため、個人で対応するのは難しい場合も多いでしょう。
また、被害者本人が示談交渉を行うことには、不利な内容で示談を締結するおそれがあったり裁判基準で慰謝料を請求できなかったりするなど、さまざまなデメリットが存在します。
交通事故の被害に遭われた方は、示談交渉は弁護士に任せてください。
まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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