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建造物損壊罪の成立要件と罰則とは? 器物損壊罪との違いや典型例

2021年07月15日
  • その他
  • 建造物損壊罪
建造物損壊罪の成立要件と罰則とは? 器物損壊罪との違いや典型例

令和3年4月、各地で城閣などに傷をつけた容疑で逮捕・送検された経歴のある男が、建造物損壊罪と器物損壊罪の2つの罪で新たに起訴されたと報道されました。建造物損壊は博物館の扉を傷つけた容疑で、器物損壊は施設の壁に傷をつけた容疑にとわれています。

長崎・天草地方には大浦天主堂などのキリシタン関連遺産や軍艦島などの産業革命遺産が数多く存在していますが、いたずらに傷をつければ同じように罪に問われることになるでしょう。

ここで疑問となるのが、建造物損壊罪と器物損壊罪の区別です。どちらも建造物の一部分を傷つける行為ですが、傷つけた部分によって罪が変わるのでしょうか?

本コラムでは建造物損壊罪を中心に、器物損壊罪との違いや逮捕された場合に取るべき正しい行動について、長崎オフィスの弁護士が解説します。

1、建造物損壊罪とは? 成立要件や罰則

「建造物損壊罪」は、刑法第260条に規定されている犯罪です。
刑法では「建造物等損壊および同致死傷」の罪と表記されており、前段では建造物損壊を、後段では建造物損壊によって人を死傷させた場合に罰することが明記されています。

本章では、刑法第260条の前段に規定されている「建造物損壊罪」が成立する要件や罰則をみていきましょう。

  1. (1)建造物損壊罪の成立要件

    建造物損壊罪が成立するのは「他人の建造物または艦船を破壊した場合」です。

    「他人の」とされているため、自己所有の場合は罪には問われません。
    「建造物」とは家屋その他これに類似する建築物を指すため、一戸建ての住宅やビル・マンション、公共の建物などのほか、倉庫や公衆トイレなども含まれます。
    「艦船」とは人が居住し得る程度の大きさをもつ船舶を指すため、たとえば公園のボートなどは含まれません。
    「損壊」とは、一般的な『壊す」という行為に限られません。学説によれば、対象物の効用を害する一切の行為を損壊ととらえているため、たとえば外観や美観を著しく汚損して原状回復が困難な状態にすれば損壊として扱われます
    また、物理的な破損・汚損などがない場合でも、心理的に使用できない状態になれば損壊が成立することがあります。

  2. (2)建造物損壊罪の典型例

    実際の逮捕事例をもとに、建造物損壊罪にあたるケースを挙げてみましょう。

    • 役所の正面玄関の壁に自動車で突っ込んで損壊させた
    • 交番の出入り口扉のガラスを蹴り割った
    • 公園のトイレに建築用の木工用接着剤をまいて使用できなくした
    • 施設内に自身のふん尿をばらまいて壁や天井を汚損した


    自動車で建物の壁に突っ込む、施設の出入り口扉を破壊するといった行為が建造物損壊罪にあたるというのはイメージしやすいはずです。一方で、接着剤やふん尿をばらまくといった行為は、『壊す』という結果が伴っていないの」で、建造物損壊罪が成立することに驚く方も多いのではないでしょうか。
    これらは「汚損して原状回復が困難な状態にする」または「心理的に使用できない状態にする」という点が損壊として扱われた例といえます。

  3. (3)建造物損壊罪の罰則

    建造物損壊罪の罰則は5年以下の懲役です。
    罰金刑は設けられていないので、有罪となれば確実に懲役が科せられるという点に注目すれば重罪だといえます。

2、建造物損壊罪と器物損壊罪の違い

建造物損壊罪と器物損壊罪は非常に近い関係にある犯罪です。
冒頭で挙げた事例では、出入り口の扉を損壊させた部分は建造物損壊罪として、建物の壁を損壊させた部分は器物損壊罪として扱われています。

建造物損壊罪と器物損壊罪はどのような基準で区別されるのでしょうか。両罪の違いをみていきましょう。

  1. (1)建造物の重要部分にあたるか

    建造物損壊罪と器物損壊罪は、損壊の『対象物』によって区別されます。
    建造物損壊罪では「他人の建造物・艦船」が、器物損壊罪では「他人の物」が対象となっているため、対象物の大小で適用される罪が変わるのは容易に想像できるはずです。

    問題は、対象物が建物であるのに器物損壊罪が適用されるケースがあるという点でしょう。
    この点については、次のような基準で判断します。

    • 損壊した部分と建造物本体との接合の程度
    • 損壊した部分の建造物としての重要性


    たとえば、リビングの窓ガラスや玄関に設置しているポストなどは、工具を使用することによって容易に取り外しが可能であるため、これらを損壊した場合は、物として器物損壊罪が成立するものと考えられます。
    一方で、玄関の扉、施設の自動ドアやエントランス一面に張られたガラスなどは、屋外と屋内を隔てる重要部分については、建造物損壊罪の対象となると考えられるでしょう。

    外壁は取り外しが困難な建造物の一部ではあるものの、傷などの軽微な破損であれば美観が損なわれる程度も軽く、建造物としての重要な機能も損なわれないため、建造物損壊罪ではなく器物損壊罪に問われるケースが多いといえます。

  2. (2)刑罰は建造物損壊罪のほうが重い

    両罪の法定刑を比較すると、建造物損壊罪のほうが重い刑罰が規定されています。

    • 建造物損壊罪……5年以下の懲役
    • 器物損壊罪……3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料


    建造物損壊罪のほうが法定刑の上限が重いだけでなく、罰金・科料といった刑罰が規定されていません。刑事裁判で有罪となれば必ず懲役が科せられるという点をみると、建造物損壊罪のほうが重罪であるといえるでしょう。

  3. (3)器物損壊罪は親告罪

    器物損壊罪は、検察官が起訴するにあたって被害者の告訴が必要となる「親告罪」に規定されていますが、建造物損壊罪は親告罪ではありません。これは、器物損壊罪が比較的に軽微な損害を想定しており、加害者・被害者の当事者間で話し合い、弁償などの方法で解決することが望ましいとされているためです。

    器物損壊罪では被害者が警察に告訴しない限りは刑罰を受けることはありませんが、建造物損壊罪では被害者が告訴しなくても検察官の判断で起訴が可能です

3、建造物損壊罪で逮捕された場合の流れ

建造物損壊罪の容疑で逮捕されると、その後はどのような流れで刑事手続きを受けるのでしょうか。

  1. (1)逮捕・勾留で身柄拘束を受ける

    警察に逮捕されると、警察署の留置場に身柄を置かれたうえで取り調べを受けることになります。その後、逮捕から48時間以内に留置の必要がないとして釈放されなければ、検察官へ送致され、引き続き取り調べが行われます。

    検察官は送致から24時間以内に、被疑者を釈放するか、勾留を請求しなくてはなりません。検察官からの請求で裁判官が勾留を認めた場合は、原則10日間以内、延長でさらに10日間以内、合計で最長20日間まで身柄拘束が延長されます。

    勾留を受けた被疑者の身柄は警察へと戻され、再び留置場に身柄を拘束されたまま、警察・検察官の取り調べが継続されます。

  2. (2)起訴されると刑事裁判になる

    勾留が満期を迎える日までに、検察官は起訴・不起訴を決定します。

    起訴されると被疑者の立場は被告人となり、刑事裁判を待つ身としてさらに勾留を受けます。その後、刑事裁判が開かれ、数度の審判を経て判決が下されます。

    一方で、検察官が不起訴とした場合は、刑事裁判は開かれません。刑事裁判が開かれないので、もちろん刑罰が下されることも、前科がついてしまうこともありません。

4、示談交渉を弁護士に依頼すべき理由

建造物損壊罪に問われた場合は、厳しい刑罰を回避するためにも弁護士に相談しサポートを得るのが最善策です。

  1. (1)示談交渉の重要性

    建造物損壊罪は最長5年の懲役を科せられる重罪です。有罪となれば必ず懲役刑となり、3年を超える判決を言い渡された場合は、執行猶予もつきません。

    厳しい刑罰を回避するには、被害者との示談交渉がきわめて重要です。
    被害者との示談が成立し、被害届や告訴が取り下げられれば、検察官が起訴を見送る可能性が高まります。前述したように、検察官が不起訴とすれば、刑事裁判が開かれないため刑罰を受けることはありません。
    もし検察官が起訴に踏み切ったとしても、すでに謝罪のうえで弁済を尽くしていれば、被告人にとって有利な事情として扱われるため、刑罰が軽減される可能性にも期待できるでしょう。

  2. (2)示談交渉は弁護士に一任する

    示談は、交渉の場を設けたうえで被害者に謝罪し、損壊部分の修繕費用を支払う、または修繕費用にあたる金額を弁済するなどを実施します。

    ただし、被害者の多くは建造物損壊の被害を受けて強い怒りを感じているため、加害者本人やその家族が交渉を希望しても、話し合いに応じてもらえない可能性が高いでしょう。また、加害者側が被害者と直接話し合うことで、新たなトラブルに発展するおそれもあります。

    そのため、原則として示談交渉は弁護士に一任するべきといえます

    弁護士が捜査機関に働きかけることで、被害者の連絡先を入手できる可能性があるので、早い段階で示談交渉の場を設定することが実現できます。示談交渉がスタートした後は、弁護士は被害者感情に寄り添いつつも、適切な内容での示談成立を目指し、粘り強く交渉を続けます。また、弁護士が示談交渉を行うことで、被害者が警戒心を和らげ、円満な示談成立にも期待できるでしょう。

5、まとめ

建物の扉・ドアなどの重要部分を損壊させる行為は、器物損壊罪ではなく建造物損壊罪によって厳しく処罰される可能性があります。
たとえ、いたずらのつもりだったとしても、有罪になれば必ず懲役が科せられてしまいます。建造物損壊罪の容疑をかけられて警察に逮捕されてしまった場合は、素早い接見と早期釈放に向けた弁護活動が必要です。

建物を壊すなどして逮捕されるおそれがある場合や、ご家族が逮捕されてしまった場合は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 長崎オフィスにご相談ください。
被害者との示談交渉を進めて不起訴を目指すほか、厳しい刑罰が科せられる事態を避けるために全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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