逮捕されたらどうやって弁護士を呼ぶ? 連絡方法や注意点を解説

2024年03月28日
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逮捕されたらどうやって弁護士を呼ぶ? 連絡方法や注意点を解説

長崎県警察が公開している統計資料によると、令和4年(2022年)に長崎県内で認知された刑法犯の数は3244件で、うち1922件が検挙に至りました。検挙率は約59.2%となります。全国の検挙率の平均が41.6%であることを考慮すると、長崎県の検挙率はかなり高いといえます。

犯罪の容疑をかけられると、警察に逮捕される場合があります。もし逮捕された場合には、速やかに弁護士を呼ぶことが大切です。

本コラムでは、逮捕されたときに弁護士を呼ぶ方法や、弁護士を呼ぶにあたって利用できる制度などを、ベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士が解説します。

1、警察に逮捕された! どうやって弁護士を呼ぶ?

一般社会で生活している人のほとんどは、警察に逮捕されるという経験をしたことがないでしょう。
もし逮捕されてしまうと、気が動転してしまい、これからどうすればいいか冷静に判断できない可能性もあります。
しかし、「逮捕されたときにはすぐに弁護士を呼ぶべきだ」と普段から理解しておくことで、いざという時にも適切な対応が取りやすくなるでしょう。

以下では、警察に逮捕されたとき、どうやって弁護士を呼ぶのかについて解説します。

  1. (1)警察官に「弁護士を呼んでほしい」と伝える

    警察に逮捕されると、自由な行動は大幅に制限されます。
    家族や勤務先などに電話することも許されず、逮捕直後の72時間は面会さえも認められません。
    携帯電話・スマートフォンなども自由に使えず、警察署の留置場に預けて保管されるので、自分で弁護士に連絡するのは不可能です。

    逮捕された本人が弁護士を呼ぶには、警察官に「弁護士を呼んでほしい」と伝えるしかありません
    「警察官に頼んでも、ちゃんと弁護士を呼んでくれるかどうか不安だ」と思う方もおられるでしょうが、この点については心配する必要はありません。
    逮捕されて警察署に連行されると、なによりも先に被疑者の弁解を聴取する「弁解録取(ろくしゅ)」がおこなわれます。
    弁解録取とは、逮捕の理由となった犯罪事実を告げたうえで弁解を簡潔に聴き取る手続きです。
    弁解録取をおこなう警察官は、刑事訴訟法第203条1項の定めにもとづき弁護人を選任する権利があることをかならず告げなければならず、その返答は「弁解録取書」という書面に記載されます。
    たとえば「弁護人は〇〇法律事務所の△△弁護士を選任します」と答えた事実は書面に残るため、警察もいい加減なことはできないのです。

  2. (2)家族などが弁護士に連絡する

    逮捕された本人ではなく、その家族から連絡しても、弁護士を呼ぶことは可能です
    先に挙げたように逮捕された本人による連絡は不可能であるため、実際には家族から連絡して弁護士を呼ぶことになることも多いでしょう。
    警察に連絡をまかせても弁護士を呼んでもらえますが、もし家族の目の前で逮捕されたり任意同行されたりした場合には、家族から連絡したほうが素早い対応が期待できます。

2、逮捕されたときに弁護士を呼ぶべき理由と注意点

弁護士といえば、被告人にとって有利な事情を裁判官に主張したり、犯罪を立証しようとする検察官と争ったりと、法廷の場で活躍するイメージが強いでしょう。
しかし、弁護士は裁判に発展する以前の段階からも、トラブルを解決したり事態の悪化を防いだりするために、さまざまな対応を取ることができます

以下では、逮捕されたときに弁護士を呼ぶべき理由や、弁護士を呼んだあとの注意点を解説します。

  1. (1)逮捕直後に急いで弁護士を呼ぶべき理由

    警察に逮捕されたときに、急いで弁護士を呼ぶべき理由は、主に以下の三つです。

    • 取り調べにあたって注意すべきポイントなどのアドバイスを受けるため
    • 暴力や脅しなど、不当な取り調べがおこなわれることを防ぐため
    • 家族や勤務先との連絡役を依頼するため


    警察に逮捕されると、警察の段階で48時間、検察官の段階で24時間というタイムリミットが設けられているなかで厳しい取り調べがおこなわれます。
    捜査機関は被疑者がみずからの罪を認める「自白」の供述を引き出そうと必死になるため、自白しなければ大きな不利益を受けると脅したり、捜査機関にとって都合のよい供述に誘導したりといった手段を用いてくるおそれもあります。
    ひとたび不利な供述調書が作られてしまえば、その内容を覆すのは簡単ではないので、弁護士のアドバイスに従って対応したほうが安全です

    また、逮捕から72時間は、たとえ家族であっても逮捕された本人との面会は許されません。
    家族と連絡を取り合ったり、勤務先にやむを得ず出勤できないことを伝えたりするためには、法律によって逮捕直後でも接見が認められている弁護士のサポートが必要になります

  2. (2)弁護士を呼んだあとの注意点

    弁護士を呼ぶよう手配したあとは、不用意な供述をしないように注意しましょう
    犯罪の容疑をかけられている被疑者には、刑事訴訟法第198条2項によって、自己の意思に反して供述をする必要がないという権利が定められています。
    この権利は「黙秘権」や「供述拒否権」と呼ばれており、たとえ行使してもそのことを理由に不利益な扱いを受けることはありません。
    弁護士から具体的なアドバイスを受けるまでは、「弁護士と相談するまで供述しない」と告げて供述を拒むことも、なにも説明せず沈黙を貫くことも、被疑者に認められた正当な権利です

    ただし、法律が認めているのは供述の拒否であり、警察官や検察官による取り調べを拒否する権利までもが認められているわけではありません。
    明らかな法律や条文は存在しませんが、逮捕・勾留を受けている被疑者には取り調べに応じる受忍義務があるというのが通説なので、黙秘権を行使するとしても取り調べには応じる必要があるのです。

3、逮捕されたときに呼ぶことができる弁護士の種類

刑事事件における弁護士には、いくつかの種類があります。
ここでは、逮捕されたときに呼ぶことができる弁護士の種類を紹介します。

  1. (1)当番弁護士

    警察による逮捕は、突然にやってきます。
    なんの準備や心づもりもないまま逮捕されてしまい、法的な知識がないまま不利な扱いを受けてしまう事態を避けるために心強い味方になってくれるのが「当番弁護士」です。
    当番弁護士制度は、逮捕後に一度だけ無料で弁護士が派遣され接見してくれる制度で、各弁護士会が実施しています。
    取り調べにはどのように対応すればよいのか、今後の事件の流れや処分の見込み、解決策などのアドバイスが無料で得られるため、とくに指定する弁護士がいない場合はまず当番弁護士を呼ぶとよいでしょう。

    なお、当番弁護士として接見した弁護士に引き続き弁護活動を依頼することも可能ですが、その場合は改めて私選弁護人として選任する必要があります。
    また、当番弁護士は弁護士会に登録している弁護士のなかから選ばれるため、普段は刑事事件を取り扱っていない弁護士やまだ経験が浅い弁護士が派遣されることもあるという点は認識しておく必要があります。

  2. (2)国選弁護人

    弁護士に刑事事件の弁護活動を依頼するには費用がかかります。
    経済的に余裕がなく弁護士への依頼をためらってしまうなら「国選弁護人」の選任を検討してください。
    国選弁護人は、貧困などの理由で被疑者がみずから弁護人を選任できない場合に、裁判所・裁判長・裁判官によって選任される弁護士です。
    ここでいう「貧困などの理由」とは、自己の現金や預金、会社の共済金や自分あての小切手などの資産が50万円未満の場合を指します。

    国選弁護人を選任した場合は、接見や法廷での弁護活動などにかかる費用は国が全額負担してくれるため、弁護士費用の負担は発生しません。
    資力がなくても刑事弁護が受けられるという点では非常に有意義な制度ですが、当番弁護士と同じで、刑事事件の経験が少ない弁護士が割り当てられてしまう可能性があることは認識しておきましょう。

  3. (3)私選弁護人

    当番弁護士や国選弁護人は、弁護士会や国が弁護士を派遣・選任してくれるため、とくに頼れる弁護士に心当たりがないという人にとっては便利ですが、刑事事件の経験が豊富な弁護士が選ばれるとは限りません。
    すでに懇意にしている弁護士がいる場合や、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士に充実した弁護活動を依頼したいといった希望がある場合には「私選弁護人」を選任しましょう

    私選弁護人とは、逮捕された本人やその家族などがみずから選任する弁護士です。
    当番弁護士や国選弁護人は逮捕後でなければ選任できませんが、私選弁護人はどんなタイミングでも選任できるため、逮捕の回避や勾留の阻止に向けた素早い弁護活動が期待できます。

4、逮捕は事前に知らされる? 逮捕前・逮捕後の流れ

以下では、逮捕は事前に知らされるかどうか、逮捕前や逮捕後における刑事事件の法的手続きの流れを解説します。

  1. (1)逮捕に事前告知や予兆はない

    逮捕に事前の告知や予兆は基本的にありません。
    そもそも「逮捕」とは、犯罪の容疑がある者について、その身柄を拘束することで逃亡や証拠隠滅を図る事態を防ぎ、正しい刑事手続きを受けさせるための強制処分です。
    対象者に「〇月〇日に逮捕する」などと事前に告知すれば逮捕や刑罰をおそれて逃亡・証拠隠滅を図るおそれが高まるので、逮捕は秘密裏に進められます。
    そのため、逮捕に不安を抱えているからといって警察署や裁判所に「私を逮捕する予定はあるのか?」「私に対する逮捕状は発付されているのか?」などと問い合わせても、答えは教えてもらえないのです。

    また、警察が逮捕を予定していたとしても、日常生活に変化は生じません。
    理由もわからず会社から解雇されたり、急に預金口座が使えなくなったりするといった予兆もないため、逮捕をみずから察知することは困難です。

  2. (2)逮捕されると最大23日間にわたって身柄を拘束される

    警察に逮捕されると、警察の段階で48時間以内、検察官の段階で24時間以内、合計で72時間にわたる身柄拘束を受けます。
    さらに検察官の請求によって勾留が認められると、最短で10日間、最長で20日間にわたって身柄を拘束されるので、合計すると72時間+20日間=最大23日間は社会から隔離された状態が続きます。
    身柄拘束が長期にわたれば、会社から解雇されたり、学校から退学処分を受けたりといった不利益が生じてしまい、社会復帰が難しくなってしまうおそれもあります。

    身柄拘束の長期化を防ぐためには、逮捕の回避、勾留の阻止といった弁護活動が必要になります。
    ところが、国選弁護人を選任できるのは逮捕後に限られてしまい、しかも本人が希望しても選任されるのは逮捕から数日後なので、勾留決定後になってしまいます。
    身柄拘束の長期化を防ぎたいと望むなら、すぐに弁護活動を展開できる私選弁護人に依頼することが大切です

  3. (3)検察官が起訴すると刑事裁判が開かれる

    勾留が満期を迎える日までに、検察官が起訴・不起訴を判断します。
    起訴とは刑事裁判を提起すること、不起訴とは起訴を見送るという意味で、起訴・不起訴の決定は検察官だけに認められている権限です。
    起訴されると被疑者の立場は刑事裁判の被告人へと変わり、警察署の留置場から拘置所へと移送され、刑事裁判が終了するまでさらに勾留されます。
    一方で、不起訴になると刑事裁判が開かれないので、身柄を拘束する必要もなくなり、即日で釈放されます。

    国選弁護人を選任しても、不起訴を目指した弁護活動が期待できなくなるわけではありません。
    しかし、刑事事件はとくに弁護士の知識や経験が成果につながりやすいので、やむを得ない事情がない限り、自分で弁護士を選べない国選弁護人を利用するのは得策とはいえないでしょう。
    有利な処分を得るためにも、刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士を探して私選弁護人に選任することをおすすめします

5、まとめ

犯罪の容疑をかけられて警察に逮捕されてしまった場合には、すぐに弁護士を呼ぶことが大切です。
とくに心当たりがなく頼れる弁護士がいない場合でも、まずは当番弁護士を呼んで取り調べへの対応や今後の流れ・見込みなどについてアドバイスを受けましょう。
ただし、当番弁護士を呼べるのは逮捕後の一度限りで、継続的な弁護活動は期待できません。
また、経済的に困窮している場合は国が費用を負担してくれる国選弁護人の利用も可能ですが、自分で弁護士を選べないという点で不利になります。
逮捕・勾留による身柄拘束を避けたい方や、刑事処分を軽減したいと望む方は、刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士を私選弁護人として選任するのが最善です。

ご自身やご家族が逮捕されてしまったら、まずは、ベリーベスト法律事務所にお電話をください。
刑事事件の解決実績を豊富にもつ、ベリーベストの弁護士が、私選弁護人として最善の対応をいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています