刑事事件で示談が不成立になるとどうなる? 対処法とは?

2025年06月12日
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刑事事件で示談が不成立になるとどうなる? 対処法とは?

示談は、刑事事件を穏便に解決し、処罰を軽減する上で非常に重要な方法です。一方、示談成立にこだわるあまり、交渉に時間がかかると、起訴される可能性が高まり、刑罰が重くなるおそれがあります。

そのため、被害者との示談交渉が行き詰まった場合には、いったん交渉内容や対応方針を見直し、適切な対処を行うことが大切です。

本コラムでは、示談が不成立となった場合にどのようなリスクがあるのか、またその理由や有効な対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士が解説します。


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1、刑事事件で示談が不成立になるとどうなる?

刑事事件で示談が不成立となったとしても、必ずしも前科がつくとは限りません。しかし、示談が成立していないことで、今後の手続きや処分において不利になる可能性がある点には注意が必要です。特に、以下のようなリスクが生じます。

  1. (1)起訴される可能性が高まる

    示談が不成立となった場合、起訴される可能性が高くなります

    検察は、事件の悪質性や被害結果の重要性、そして被害者側の処罰感情などさまざまな要素を総合的に考慮し、起訴・不起訴を決定します。

    示談が成立していないことは、被害者が加害者を許しておらず、強い処罰感情を抱いていると受け取られるため、起訴される可能性が高まります。

    起訴されると刑事裁判を受けることになり、犯罪行為をしたことが明らかである場合は有罪判決を避けるのは困難です。

  2. (2)刑罰が重くなる可能性がある

    仮に起訴された場合、示談の有無は量刑判断にも大きく影響します

    被害者との示談が成立していれば、すでに当事者同士で和解していることの証明となり、反省や被害弁償したことが認められ、減刑される可能性が高くなります。

    一方、示談が成立していない場合は、「被害者の処罰感情が強い」「加害者の反省が足りていない」と捉えられやすいです。結果として、示談が成立したケースよりも重い刑罰を受ける可能性があります。

  3. (3)民事訴訟を提起される可能性がある

    さらに、示談が不成立となった場合、刑事手続きとは別に、被害者から損害賠償を求める民事訴訟を提起される可能性があります

    民事訴訟とは、個人間の法的な紛争を解決するための裁判手続きです。民事訴訟で敗訴した場合は、判決に基づいて賠償金の支払い義務が発生します。

    あらかじめ示談が成立していれば、示談金の支払いによって被害弁償が可能です。しかし、示談不成立の場合は被害弁償が行えないため、民事訴訟を提起されるリスクは高まるでしょう。

2、示談が不成立になる理由

示談が不成立となる背景には、さまざまな事情があります。主な理由として、以下の4つを解説していきます。

  1. (1)被害者の処罰感情が強い

    被害者の処罰感情が強いと、示談は成立しにくくなります。特に加害者への怒りや憎しみの気持ちが強い場合には、示談交渉自体を拒絶されるケースもあります。

    事件によって精神的・肉体的に大きな被害を受けた被害者にとって、加害者を許して和解することが難しい場合もあるでしょう。

    このようなケースでは、誠意をもって丁寧に謝罪の気持ちを伝えていく必要があります。被害者の気持ちに寄り添い、誠実に対応できる弁護士に示談交渉を任せることが望ましいです。

  2. (2)示談の条件の不一致

    示談交渉では、示談金の金額や支払い方法のほか、告訴の取り消しや清算条項などさまざまな条件を取り決めます。その中で、金額や条件について当事者間の意見が食い違うと、示談が不成立となることがあります

    被害者に納得してもらうには、できるだけその気持ちをくみながら条件を提示することが重要です。

    しかし、被害者から高額な示談金や厳しい条件を提示された場合、加害者側が受け入れられず、交渉が決裂してしまうこともあります。

  3. (3)示談金を用意できない

    示談金を用意できないことも、不成立の大きな要因となります

    示談では被害者の被った損害を回復する目的もあるため、一定の金額の支払いが求められることがほとんどです。

    しかし、示談金が支払えるほどのまとまったお金をすぐに用意できないケースもあるでしょう。

    分割払いを申し出ることも可能ですが、被害者がそれを受け入れない場合もあります。示談金を一括で準備できるかどうかの問題は、示談交渉を難航させる代表的な要因のひとつです。

  4. (4)相手と連絡が取れない

    被害者の連絡先が入手できず、連絡が取れずに示談不成立となるケースもあります。刑事事件では、加害者本人が被害者の連絡先を入手するのは困難です。

    たとえ警察官や検察官に問い合わせたとしても、プライバシー保護やトラブル防止の観点から断られるのが通常でしょう。また、被害者自身が加害者に連絡先を知られたくないと拒否することもあります。

    このような場合には、弁護士に依頼して弁護士経由で連絡を取る方法が有効です。被害者と直接交渉するのは避け、早めに弁護士への相談を検討しましょう。

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3、示談が不成立になった場合の対処法

示談が不成立になったからといって、すぐにあきらめる必要はありません。対処次第では、状況が改善する場合もあります。

以下で、示談不成立となった際の具体的な対処法を確認していきましょう。

  1. (1)最初の示談交渉の内容を見直し、再度示談交渉を進める

    最初の示談交渉がうまくいかなかった場合は、内容を見直して再度交渉を試みましょう。示談金の金額や支払い方法、謝罪の表現などが適切でなかった可能性があります。

    被害者の気持ちに寄り添えていたか、形式的な対応になっていなかったかも振り返りのポイントです。

    内容を改善した上で時間をおいて再度交渉を進めることで、示談が成立するケースもあります。

  2. (2)供託や贖罪寄付を検討する

    被害者との示談が不成立となった場合、「供託(きょうたく)」や「贖罪寄付(しょくざいきふ)」を行う手段もあります

    供託とは、示談金相当額を被害者の代わりに法務局に預けることで誠意を示す方法です。また、贖罪寄付は、反省の意思を示すために弁護士会や社会福祉団体などに寄付を行う方法です。

    どちらも刑事処分が軽くなる可能性のある行為であるため、どうしても示談が成立しない場合の対処法として検討しましょう。

  3. (3)弁護士に相談する

    示談が難航している際にもっとも有効な対処法は、弁護士への相談です。弁護士は被害者側の感情や適正な条件を踏まえた上で交渉を進められるため、示談が成立する可能性を高められます。

    また、示談不成立となった場合も、供託や贖罪寄付をすべきかどうかについてアドバイスができます。

    早めに弁護士へ相談することで、状況を改善できる可能性が広がるでしょう。

4、刑事事件の示談交渉を弁護士に依頼すべき理由

刑事事件で示談交渉を行う際は、自分だけで進めるのではなく、早めに弁護士へ依頼することをおすすめします。示談交渉を弁護士に依頼すべき理由は、以下のとおりです。

  1. (1)迅速な対応が期待できる

    早い段階で弁護士に依頼しておくと、迅速な対応が期待できます。

    刑事事件では、示談交渉にあたるまでのスピードが非常に重要です。特に前科がつくのを避けたい場合は、起訴・不起訴が決定するまでに交渉を進めていく必要があります。

    示談書の準備や連絡の取り方・交渉の進め方などを弁護士に一任することで、余計な時間のロスを防げるでしょう。

  2. (2)示談が成立する可能性を高められる

    弁護士に依頼すると、示談が成立する可能性を高められます。

    「加害者には連絡先を知られたくないけど、弁護士になら教えてもいい」と考える被害者は多い傾向です。また、弁護士は被害者側の心理や事情を理解した上で、適切な条件を提示しながら交渉を進められます。

    加害者本人が直接交渉を行うと、被害者に恐怖や不信感を抱かせてしまうリスクがあります。しかし、弁護士を介することで冷静な話し合いが可能になり、示談成立の可能性は高くなるでしょう。

  3. (3)適正な金額で示談できる可能性が高まる

    弁護士に示談交渉を依頼することで、適正な金額で示談できる可能性が高くなります

    示談の金額は、示談交渉を進める上で非常に重要な項目です。しかし、示談金は自由に設定できるため、当事者双方が納得できる金額を話し合いで決めなければなりません。

    被害者の許しを得るには一定の金額を支払う必要がありますが、被害者側が不当に高額な金額を提示するケースも考えられます。弁護士であれば過去の判例や事件内容に基づいた適正な金額を提示できるため、必要以上の負担を防ぐことができるでしょう。

  4. (4)示談が不成立の場合でも適切な対応を検討できる

    示談が不成立となった場合でも、弁護士であれば次の一手をすぐに提案できます。どれだけ誠意を尽くしたとしても、被害者側が示談に応じてくれるとは限りません。

    弁護士に依頼していれば、示談の成立が見込めないとわかった時点で供託や贖罪寄付といった手段を検討できます。また、刑事手続きで被疑者が不利な立場になることを防ぐための弁護活動も可能です。

    示談交渉に失敗しても「その後どうするか」を一緒に考えられるのは、弁護士に依頼するメリットといえます。

5、まとめ

示談が不成立になったからといっても、直ちに前科がつくわけではありません。前科がつくかどうかは、起訴後に裁判所がどう判断するかによります。

しかし、示談成立は不起訴や減刑につながる可能性のある要素です。示談が不成立になると、起訴される可能性が高くなったり、刑罰が重くなったりするリスクがあります。

加害者自身で交渉を試みても、感情的な対立や条件面での調整が難航するケースもあるでしょう。そのため、示談交渉は早い段階で弁護士に一任することをおすすめします。

法律知識や経験をもつ弁護士が示談交渉にあたれば、状況に応じた適切な対処が可能となり、示談成立の可能性も高まります。

刑事事件の被害者との示談交渉で悩んだら、まずはお気軽にベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています