再雇用を契約更新しないのは違法? 解雇が認められるケースや注意点

2025年05月28日
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再雇用を契約更新しないのは違法? 解雇が認められるケースや注意点

厚生労働省が発表した令和6年の「高年齢者雇用状況等報告の集計結果」によると、雇用確保措置を実施している企業のうち67.4%が「継続雇用制度」を導入しています。継続雇用制度とは、定年後65歳未満であれば、本人の希望により引き続き雇用する制度です。

本人の希望があったにもかかわらず再雇用の契約更新をしない行為は原則として違法とされており、正当な理由なく解雇することは認められません(高年齢者雇用安定法第9条、第10条)。

しかし、なんらかの理由によって使用者側が更新を避けたいケースもあるでしょう。本コラムでは、再雇用の契約更新をしないことが認められるケースや注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士が解説します。

1、再雇用の契約更新は拒否できる?

企業が65歳未満の定年制を採用している場合、65歳までの再雇用を拒否することは原則として違法となります

高年齢者雇用安定法では、企業に対して「65歳までの高年齢者雇用確保措置」を義務付けています。定年の引き上げや廃止をしない企業は、希望する従業員に対しては定年後であっても65歳まで雇用を継続しなければなりません。

したがって、企業側の一方的な理由で再雇用の契約更新を拒否すると、法律に反する可能性が高くなります。

ただし、いかなる場合でも無条件に契約更新が認められるわけではありません。再雇用の契約更新をしないことを検討する際は、労働者とのトラブルを避けるためにも慎重な判断が必要です。

2、再雇用の契約更新をしないことが認められるケース

再雇用の契約更新は原則として拒否できませんが、以下のようなケースでは例外的に拒否できる可能性があります。

  1. (1)正当な解雇理由がある

    再雇用の契約更新をしないためには、正当な解雇理由が必要です。

    正当な解雇理由の例としては、以下が挙げられます。

    • 従業員の業務命令違反や規律違反
    • 企業側の事情による整理解雇


    高年齢者雇用安定法は高齢者が安定して働けるように定められた法律であり、高齢者以外の社員よりも優遇する法律ではありません。そのため、正当な解雇理由があれば、通常の社員と同様、労働契約法に基づいた解雇や契約更新の拒否が可能です。

    労働契約法では、客観的に合理的かつ社会通念上相当な理由のない解雇は無効と定めています。正当な解雇と認められることは簡単ではないため、不当解雇にならないよう適切な判断と対応が必要です。

  2. (2)労働条件を提示したが合意しなかった

    再雇用にあたって、企業が提示した労働条件に従業員が同意しなかった場合、契約更新しないことが認められる可能性があります。

    定年後の再雇用では、定年前と同じ労働条件が義務付けられているわけではありません。定年前とは異なる労働条件を提示した結果、従業員側が拒否して雇用契約を終了した場合は適法となります。

    なお、極端に低い賃金などの不当な条件を提示することは問題となる可能性があります。労働条件を提示する際は、従業員との合意形成を前提に、合理的な内容であるかどうかを判断しましょう。

  3. (3)健康上の問題がある

    従業員に健康上の問題があり、業務の継続が困難な場合は再雇用契約の更新をしないことが認められる可能性があります。

    業務以外の原因による病気やケガの場合、まず就業規則で決められた休職期間のとおり休職させる必要があります。休職期間満了までに復職が難しい場合、解雇が可能です。

    一方で、業務が原因の病気やケガ(労災)の場合は、休職期間中および休職期間後の30日間は原則として解雇ができません。この制限は労働基準法で規定されており、「解雇制限」といいます。

    復職や解雇を判断するには、従業員の主治医の意見も確認する必要があります。不当解雇とならないためにも、健康上の問題を理由とした一方的な解雇は避け、慎重に判断しましょう。

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3、再雇用の契約更新をせず、解雇する際の注意点

再雇用の契約更新をせずに解雇する場合、企業として注意すべきポイントがあります。法的な問題に発展するリスクを回避するためにも、以下の注意点を把握しておきましょう。

  1. (1)業務命令違反などで即時解雇してはいけない

    従業員が業務命令違反や問題行動を起こした場合でも、原則として即時解雇は認められません。解雇に至るためには、最低限以下のような対応が必要です。

    • 従業員に対する注意や指導
    • 戒告処分や減給処分などの懲戒処分


    注意や指導をしても改善されず、懲戒処分を行っても業務命令に従わない場合は解雇理由として認められやすくなります

    解雇の有効性についての争いを避けるためにも、注意指導の記録は都度録音や報告書などで残しておくようにしましょう。

  2. (2)30日以上前に解雇予告を行う

    再雇用の契約更新を行わずに解雇する場合、労働基準法にもとづいて30日以上前に解雇予告を行う必要があります。これは、従業員が突然の解雇によって生活に支障をきたさないようにするための法律です。

    もし30日前に解雇を通知しなかった場合、解雇予告手当の支払いが義務付けられます。

    企業側が法律を順守しながら解雇手続きを進めることで、不当解雇とみなされるリスクを避けられるでしょう。

  3. (3)解雇予告手当を支払う

    解雇予告を30日前までに行わない場合、企業は従業員に対して解雇予告手当を支払わなければなりません

    解雇予告手当の計算方法は、以下のとおりです。

    解雇予告手当=1日あたりの平均賃金×日数


    日数については、解雇予告を行わないときは30日分となります。30日よりも短い期間で解雇予告をした場合、不足している日数分の解雇予告手当を支払います。

    たとえば、解雇を通知した日から10日後に雇用を終了させる場合、解雇予告手当を支払うのは残りの20日分です。手当を支払わずに急な解雇を進めると法的なトラブルにつながる可能性が高いため、忘れずに対応を行いましょう。

4、従業員とのトラブルは弁護士に相談を

再雇用の契約更新を拒否する際や解雇を検討する際は、従業員とのトラブルが発生するリスクがあります。トラブルが予測されるケースでは、問題が悪化する前に弁護士へ相談することが望ましいです

以下では、弁護士に相談するメリットを解説します。

  1. (1)正当な解雇理由かどうか判断できる

    弁護士に相談することで、企業が考えている解雇理由が法的に正当であるかを判断できます。

    再雇用の契約更新をしないためには、「正当な解雇理由」があるかどうかは重要なポイントです。しかし、企業側の主観で判断してしまうと、労働者から訴訟を起こされた際、解雇に正当性が認められず不当解雇となるリスクがあります。

    弁護士は具体的な事実関係や過去の判例をもとに、正当な理由があるかどうかを精査できます。適切なアドバイスを得られれば、後々の不当解雇トラブルを未然に防げるでしょう。

  2. (2)法的手続きに対応できる

    弁護士は、法的手続きにも対応が可能です。従業員とのトラブルがこじれると、労働審判や訴訟に発展する可能性があります。

    労働審判や訴訟で不利な状況にならないためには、適切な証拠集めと主張・反論が重要です。弁護士は、書類作成や証拠の整理・答弁書の作成など総合的にサポートします。

    企業側の負担を軽減させるためにも、トラブルになりそうなケースでは早めに弁護士への相談を検討しましょう。

  3. (3)労働トラブルを未然に防げる

    弁護士への相談によって、労働トラブルを未然に防げる可能性が高くなります。

    弁護士は、労働関連法にもとづいて再雇用の契約更新を拒否できるのかどうかを判断できます。また、解雇する場合の手続きに関するアドバイスや従業員との交渉を代理して行うことが可能です。

    解雇の対応に弁護士がかかわることによって、法的に問題のない方法で手続きを進められるため、トラブルの発生を防げるでしょう。

    従業員との労働トラブルは、企業の経営にも影響を与える可能性があります。適切に解決するためにも、弁護士への相談をおすすめします。

5、まとめ

再雇用の契約更新を拒否することは、原則として違法となります。

高年齢者雇用安定法により、企業は希望する従業員に対して65歳までの雇用確保措置を講じる義務があります。したがって、企業側の一方的な都合で契約更新をしない行為は認められません。

ただし、正当な解雇理由がある場合であれば、対象者を解雇することも可能です。解雇の手続きには厳格な基準があり、法的なリスクをともなうため慎重な判断が求められます。

再雇用の契約更新や解雇に関する判断に迷った場合は、弁護士に相談することをおすすめします。従業員とのトラブルを避けるためにも、ぜひベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています