水源地詐欺とは? だまされてしまったと気付いたときの対処法
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「水源地への投資の権利を購入すれば、年利○%の配当が出る」などと投資話を持ち掛けられたことはないでしょうか。
「確実に儲かる」、「元本保証なので安心です」などの甘い言葉に誘われて、水源地の購入や投資に応じてしまう方もおられます。
しかし、水源地などを対象とした投資話は、悪質な詐欺行為である可能性があるのです。本コラムでは、水源地詐欺に遭ってしまった場合の相談先と対処法について、ベリーベスト法律事務所 長崎オフィスの弁護士が解説します。
1、水源地詐欺とは?
まず、水源地詐欺の概要について説明します。
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(1)水源地詐欺は原野商法の一種
水源地詐欺とは、ほとんど価値のない土地を「水源地」と称して高額で売りつけたり、投資目的で水利権の販売を行ったりするという手口の詐欺です。
値上がりが見込めないような山林や原野をだまして売りつける商法を「原野商法」と呼びますが、水源地詐欺は、山林や原野が水源地に置き換わっただけで、実態は原野商法の一種といえます。
価値がないものを価値があるもののように偽って売りつける行為は、刑法上の詐欺罪に該当します。
そのため、水源地詐欺として立件されれば、水源地詐欺の加害者に対しては、10年以下の懲役が科されます(刑法246条)。 -
(2)水源地詐欺の手口
水源地詐欺の代表的な手口には、以下のようなものがあります。
① 値上がり確実な土地だと思わせる
水源地詐欺の手口としては、「大手飲料メーカーの○○も購入を検討している」、「水源地を狙って中国人が土地の買い占めをしている」などの虚偽の情報を伝えて、あたかも価値のある土地であるかのように錯覚させる手口です。
② 土地の購入により水源が利用できると思い込ませる
水源地の土地を購入したとしても、それだけではその土地の水源を利用することはできません。水源地の利用にあたっては、河川法や森林法上の規制があったり、都道府県知事の許可が必要であったりなど、さまざまな法的規制がありますので、自由に利用することができるわけではないのです。
詐欺グループがそのことを承知したうえで、「豊富な水源を利用できる」などの甘い言葉で被害者を勧誘して、土地の購入を勧めてくるという場合もあります。 -
(3)水源地詐欺は二次被害のリスクもある
水源地詐欺には、二次被害のリスクも存在します。
水源地詐欺で購入した土地には、ほとんど価値がありません。
その土地を所有していても毎年の固定資産税の負担が生じるだけであるため、「できれば手放したい」と考える方が大半でしょう。
詐欺グループは、水源地詐欺の被害者のリストを作成して共有したうえで、水源地詐欺の被害者に対して、土地の売却名目で近づいてきて、高額な測量費や広告費を請求することもあります。
実際には売却活動などをしていないために、被害者はさらにお金をだまし取られることになるのです。
2、投資の話にのってしまったとき確認すべきこと
水源地詐欺などの投資話にのってしまった場合には、以下のことを確認しましょう。
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(1)お金を支払っていないか
水源地詐欺などの投資話にのってしまった場合には、相手に対して、お金を支払ってしまったかどうかを確認してください。
お金を支払っていないのであれば、詐欺被害を回避することができますので、詐欺師からの勧誘はその時点で断りましょう。
しつこく勧誘してくるようであれば、着信拒否にするなどして、連絡を取らないようにすることが大切です。
万が一、お金を支払ってしまった場合には、被害の回復に向けて詐欺の立証のための証拠を集めていく必要があります。 -
(2)被害を証明する資料があるか
水源地詐欺を立証するためには、まずは、詐欺による被害を受けた証拠が必要になります。
詐欺による被害を証明する証拠としては、以下のようなものがあります。- 詐欺師との会話を録音したボイスレコーダー
- 詐欺師から提示された水源地に関する資料
- 売買契約書
- 購入代金を振り込んだ振込明細書、領収書など
資料が多ければ多いほど、詐欺の事実が立証しやすくなります。
だまされたことに気付いたら、まずは冷静になって手元の資料を整理しましょう。 -
(3)加害者を特定する資料があるか
水源地詐欺の被害を回復するためには、加害者との交渉や裁判を行わなければいけません。
そのためには、加害者の住所、名前、連絡先など加害者を特定する資料が必要になります。
しかし、水源地詐欺という犯罪を行っている以上は、名刺をもらっていても偽名や架空の住所が掲載されている可能性がある点に注意してください。
3、話を持ち掛けられた、お金を払ってしまったときの相談先
水源地詐欺の投資話を持ち掛けられて、お金も支払ってしまったという場合には、以下のような窓口に相談してください。
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(1)市区町村の消費生活相談窓口
水源地詐欺などの投資トラブルについては、各市区町村に設置されている消費生活相談窓口で相談をすることができます。
相談方法については自治体によって異なりますが、面談相談だけではなく、無料の電話相談やメール相談などにも応じてくれる場合もあります。
まずは、お住まいの市区町村の消費生活相談窓口に連絡をしてみてください。
なお、どこに連絡すればよいのかわからないという場合には、消費者庁が設置している消費者ホットライン(118番)に連絡すれば、身近な消費生活相談窓口を案内してもらうことができます。 -
(2)消費生活センター
消費生活センターでは、消費者と事業者との間の消費者トラブルについて、広く相談を受け付けています。
水源地詐欺などの投資詐欺に遭った場合には、消費生活センターに相談すれば、専門の相談員から解決に向けたアドバイスを受けることができます。 -
(3)警察
水源地詐欺は、刑法上の詐欺罪にあたる犯罪です。
水源地詐欺の被害に遭ってお金を支払ってしまった場合には、警察に相談をすることも有効な手段となります。
ただし、警察が詐欺グループを詐欺罪で立件しても、被害者が支払ったお金が戻ってくるわけではありません。
損害額を加害者に賠償させるためには、刑事事件ではなく民事事件として訴訟を提起したりするなどの対応が必要になります。 -
(4)弁護士
水源地投資詐欺によってだまされて支払ったお金を取り戻したいという場合には、弁護士に相談してください。
弁護士であれば、被害者本人に代わって、詐欺グループと交渉をすることができます。
また、詐欺の事実を立証して、訴訟を提起するためにも、法律の専門家である弁護士の力は欠かせません。
4、払ったお金を返してもらうためにできること
水源地詐欺にだまされて支払ってしまったお金を取り戻すための方法としては、以下のようなものがあります。
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(1)クーリングオフ
電話勧誘や訪問販売によって水源地を購入してしまったという場合には、法律で決められた書面を受け取ってから8日以内であれば、クーリングオフによって無条件で契約を解除できる可能性があります。
クーリングオフできる期間は非常に短いため、「だまされたかもしれない」と思った場合には、早めに行動することが大切です。
どうすればよいかわからないという場合には、消費相談窓口や弁護士などに、早めに相談してください。 -
(2)相手との交渉
価値のない土地を価値があるかのように偽って売る行為は詐欺行為にあたるため、詐欺を理由に契約を取り消すことができる可能性もあります。
契約の相手が話し合いに応じるようであれば、まずは相手との話し合いによって、売買代金の返還を求めていきましょう。 -
(3)裁判
相手が話し合いに応じない場合には、裁判所に訴訟を提起することを検討してください。
裁判をするにあたっては、証拠関係を整理して、裁判で戦うことができるかどうかを専門的な知識に基づいて判断する必要があります。
裁判による被害回復をお考えの方は、まずは法律の専門家である弁護士にご相談ください。
5、まとめ
水源地を対象にした詐欺は、高齢者だけではなく投資に興味のある若者の間でも被害が広がっています。
まずは、水源地詐欺のような悪徳商法に遭わないように知識を付けておくことが大切です。
もし被害に遭ってしまった場合には、信頼できる家族や友人、専門家である弁護士などに、早めに相談しましょう。
水源地詐欺などの投資詐欺の被害に遭ってお困りの方は、まずはベリーベスト法律事務所までご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています